よろず夢置き場

□Because I love you./おまけ/エピソードα
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恋に…



年の差は関係ねぇんだ。





Because I love you





部活の帰り。
幼馴染みのさつきの家で、夕ご飯をご馳走になる事になった青峰。買い物に付き合い、無事に買い物を終えて、二人で帰路に着いている最中。
はたから見たら、付き合っている彼氏彼女に見え無くはない。けれど、二人からしたらただの幼馴染み。さつきは可愛いけれど。青峰も格好いいけれど。それ以上の気持ちは、お互いに持ち合わせていない。…多分。

常に目を光らせていないと、危なっかしい幼馴染み。何をするか解らないのが、これまた厄介で。だけど、悪い奴じゃないからと、さつきはため息を吐きながらつい面倒を見てしまう毎日。

ただのバスケ馬鹿。
バスケが好きで仕方なくて、毎日ボールを追い掛けていた。でも、それは中学の頃まで…。


今は、ライバルがいないバスケにのめり込めなくて、楽しくなくて、捻くれているだけ。
そして、喧嘩っ早くて、性格が破天荒故、幼馴染みのさつきが苦労するのだ。

自分の恋を実らせようとするが、どうしても放っておけない。

「テツ君も部活終わったよね。家着いたらメールしてみよっ!」

「あいつのどこがいいんだか…。さっぱり解らねぇ…」

中学時代からの友人。確かに、試合中は格好良いが、普段の練習は素人以下。シュートあまり入らないし、影薄いし大人しいし…。
アイスの当たり棒を貰ってから好きになったらしいが、さつきの好みに頭を捻りたくなった。

けど、さつきからしたら逆。
破天荒で短気な幼馴染みが傍にいるからこそ、大人しくて優しい黒子に惹かれるのだ。

試合中に光るパスに心奪われた。口数が少ない所も、影が薄い所も、さつきから見たら、魅力的でしかない。手のかかる幼馴染みより、黒子の方が素敵なんだ。

「テツ君可愛いんだもん」

恋する乙女になっているさつきを、「はいはい」と適当にあしらう。可愛いのかは、青峰にはさっぱり解らない。しかし、さつきの様に、恋をする気持ちは知っている。

そんな話をしている内に、いつの間にか家へと着いた。
上機嫌で鍵を開けたさつき。だけど、何かが可笑しい。

「あれ?」

「どーした?」

「鍵が閉まっちゃった…」

開く筈の玄関には、鍵が掛かってしまった。すでに、誰かが開けたらしく、開いた状態だったのだ。
不思議に思いながらも、さつきは再び鍵を開けた。そして、中へと入っていく。

「ただいまー」

「ちぃーっす」

慣れたもんで、軽い挨拶しかしない。幼馴染み。それくらい慣れていて当然だ。
そのまま中に進んでいくと、リビングに思いがけない人物を視界に捕らえ、青峰は一瞬固まった。先に反応を示したのは、隣にいたさつき。

「お姉ちゃん!」

「さつき、おかえり。大輝も」

二人に気付き、微笑みながら口を開く。柔らかい雰囲気に、つい見惚れてしまう。優しい笑顔に、飲み込まれそうになる。
名前を呼ばれ、青峰は我に返った。久し振りに会ったさつきの姉、桜子に、確かに鼓動が高鳴るのを感じた。だけど、悟られたくなくて冷静を装う。

恋愛にバスケのような、絶対的な自信なんて持ち合わせていない。だから、らしくなく臆病になってしまうんだ。

「仕事終わるの早いね」

「この前休日出勤した分、早く帰らせてもらえたの。それに、たまには可愛い妹の顔見に実家に帰らないとね」

「もぉー!子供じゃないもん!まぁ、嬉しいけど」

「はいはい」

年の離れた妹を、桜子はかなり可愛がっている。シスコンまでは行かなくも、それに近いものはあるかも知れない。

仕事の関係で、一人暮らしをせざるを得なくなった。今はアパートを借りて一人暮らし。
たまに、実家へ泊りに帰ってくる事もあるが、ここ最近は仕事が忙しくて中々帰って来られなかった。だから、久し振りに会えた姉の帰宅に、嬉しさが隠せない。

「今日泊まってくの!?」

「えぇ、明日休みだし」

「わぁーい!じゃぁ、気合い入れて、私がご飯作っちゃおうかなぁ」

「えっ!?」

「いや…さつき、それは止めとけ…」

「何よ!二人して!」

可愛い顔して、やる事はえげつない。料理は得意じゃないし、料理が料理じゃなくなる。
久し振りに帰って来たんだ。さつきのご飯を食べるのは避けたい。可愛い妹だけど、料理の腕だけが残念。作らずに済むなら、是非そうして頂きたい。
青峰も、さつきの料理を食べたくはない。ご馳走になりに来て、さつきの料理を出されるのは、ただの拷問だ。
二人の態度に、さつきは頬を膨らませたまま台所へ行き、袋から材料を取り出す。さすがに、自分の腕は理解しているし、二人から言われたら作りたくても作れない。

「ま、また今度作って?」

「もういいもん」

すっかり不貞腐れてしまったさつきに、桜子は乾いた笑いを向ける。
大人びていても、まだ高校生で子供。喜怒哀楽の表現の仕方は、まだまだ可愛いもの。まぁ、桜子からしたら、さつきの全てが可愛いのだ。…料理以外。

「さつき、この間の試合にレモン丸ごと漬けたの持って来てたぜ。不評だったけど…」
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