よろず夢置き場
□Obscene girlには着いてけない!
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あの日から…。
私はあなたの虜になりました。
Obscene girlには着いてけない!
*第1話*
「ひっばりさぁぁぁぁぁあん!!!!!!」
「抱き付かないで」
片腕で頭を押さえ込まれて、抱き付けず、腕の短さも相成って両腕を勢い良く回すのみ。
けど、どう頑張っても届かない。
毎朝、雲雀は校門で服装検査兼遅刻者チェックをしている。
風紀委員の仕事を、真剣な表情で全うしている。
しかし、そんな雲雀の素敵な表情に、毎朝興奮して抱き付こうとしてくる、命知らずな女子がいる。
それが、今片腕で牽制されている少し頭が弱い、卑猥な彼女。
「もうっ!雲雀さんったら…。そんな照れないで下さいよぉ!夜はもっと凄い事しなくちゃなんですからぁ!きゃぁ!」
「きゃぁ!じゃないよ。何で僕が君とシなきゃならないの?一刻も早く僕から離れて」
「そんなの決まってるじゃないですか!!私と雲雀さんが恋人だからですよぉ!」
「恋人になった覚えはない」
「またまた照れちゃってぇー。そんな事言って、腕離したくないくせにぃー」
「離したら抱き付いてくるでしょ。好きでこうしてる訳じゃない」
「好き!?今好きって言いました!!私も大好きです!!」
「はぁ…。草壁」
「はい」
何を言っても無駄。そう諦めて、雲雀は深い溜め息を吐くと、脇に構えている部下の名前を呼んだ。
部下は雲雀のして欲しい事を正確に汲み取り、騒いでいる彼女の襟を掴み、そして勢い良く引き離した。
「あん!雲雀さん!そんなに恥ずかしかったんですか?」
「遅刻したら、二度と振り向かないよ」
「いやぁぁぁぁ!!雲雀さんの視界に映らないなんて生きてる意味ない!!」
「だったら、僕の視界から消えて」
「ラジャー!!雲雀さん…また休み時間に…きゃぁぁ!!休み時間じゃ絶対に足りないぃぃ!!」
何故か顔を真っ赤にして、ハートを飛び散らせながらやっと校舎へと向かってくれた。
っていうか、何する気だ。
昇降口に着くと、後ろを振り替える。そして、デカい声で叫ぶ。
「雲雀さぁぁぁぁぁ!!アイラブユー!!アイウォンチュー!!アイニージュー!!アイファックユー!!」
綺麗に無視。
振り向きすらしない。
そんな雲雀を見ても、前向きにしか捕らえない。
「照れちゃって!かっわいーんだからぁ!って言うか雲雀さんサイコォー!!!!!」
「叫んでますが…」
「放置プレイ」
惚れられた覚えはある。
でも、付き合った覚えはない。
向こうが勝手に言っているだけ。
人目を憚らない。
正常の羞恥心がない。どこかに置いてきたみたいだ。
自分の気持ちに素直で一直線。そして欲望にも素直で、直ぐに口に出てしまう。
そんな彼女―、桜子に手を焼きながら、毎朝仕事をこなしていく。
けどこんなの、一日の始まりの挨拶にしか過ぎない…。
* * *
「はぁ…。今日も雲雀さん格好良かったぁ…」
教室に着いて、雲雀の真剣な表情を思い出して濡れ…いや、うっとりする桜子。
毎朝の事に、クラスの子達は慣れている。華麗にスルー。
「あいっかわらず諦めねぇー奴だなぁ…」
「何言ってんのよ。両想いなんだから諦める必要ないじゃない」
「アハハ!相変わらず桜子は痛いのなぁ」
「山本直球すぎだろ!」
まぁ、皆が思っている事。
山本が代弁してくれただけ。
クラスでも、沢田と獄寺、山本と仲の良い桜子。いや、仲が良いと言うか、暴走する桜子を止める役目を担っているだけ。
正常な羞恥心がない。
その上妄想癖が激しいと来た。
桜子の恋する気持ちも、卑猥な発言も止められない。
止められるとするなら、そのアクティブな行動だけ。
まぁ、確実に止められる訳じゃないけれど…。
「恋する乙女は傍から見たら痛いものなのよ」
「いや、お前は傍から見なくても痛い。寧ろ痛い所しかない」
「ヒドッ!Σ( ̄□ ̄;)」
「確かにねぇ」
「あんたチビの癖して生意気ね!!童貞チビスケ!!」
「んな!!(//□//)」
顔真っ赤にして何も言い返せない沢田。そんな沢田を、獄寺があたふたしながら宥めている。
同じクラスに好きな子がいる中での、この発言は精神的攻撃になりうる。いや、もうなっている。
沢田ドンマイ。
大丈夫。
京子ちゃん聞いてないから。