よろず夢置き場

□変態に想われて
1ページ/3ページ


「おかえりなさい、桜子」



「えっ…」



家に帰ったら部屋に、満面の笑みを浮かべた南国果実がいました。




変態に想われて





「……えぇぇぇぇ!!!!!な、何であんたがいんの!!??変態果実!!」

少しの間を開けて、骸を指差し、桜子は恐怖に怯えながら後退る。
どうして南国果実…いや基、変態果実がここにいるのかが、瞬時に飲み込めない。
いや、理解したくない、或いは出来ないのも無理はない。
部屋にあげる間柄なんかじゃない。いや寧ろ、家に来たら全力で追い返す人物だ。

「たまには正々堂々と口説こうかと思いまして」

「正々堂々って…?」


何がしたいんだこいつは…。
っていうか、こいつ…どうやって家に入り込んだんだよ。


「それならですね」

「心読むんじゃねぇーよ!!」

「訪問したら、お母様が出迎えて下さいまして」

「お母さんが?」

帰って来た時、母は自分を出迎えてくれなかった。だからてっきり、仕事に行っているのかと思っていた。
だけど、骸が来た時にはいた。骸が、母をどうにかするとも考えられない。

すると勝手に、骸は回想に入っていく。

『はじめまして。桜子さんとお付き合いしております、六道と申します。桜子さんはご在宅でしょうか…?』

『あらあら!桜子にこんな素敵な彼氏がいたなんて!!まだ帰ってきてないけど、上がってお待ちになって!ささっ!どうぞ』


「っと、言う訳です」


「っと、言う訳です。じゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!何このメジャーな展開!!??誰がいつあんたとお付き合いしたよ!!!お母さんに嘘吐いてんじゃねぇーよ!!っていうかどこが素敵な彼氏ぃぃ?!ただの変態ですけどぉぉぉぉぉー!!!!」

「因みに、お母様はお出掛けに行きましたので、暫く戻らないらしいですよ」

「えっ…嘘…」

桜子の顔から、血の気が引いていく。

母がいない。
っという事は、この変態と二人きり…?


ヤバイ!!
ヤバさパネェ!!


冷や汗が出てきた。
骸は骸で、にやっと笑っている。絶対に帰る気ないよこいつ…。


(ど、どうしよう…!恭弥に電話する…?いや、こいつの事だ。電話の最中に絶対に何かしてくるに決まってる!っていうか、恭弥呼んだら確実に家壊される!!それだけは絶対に嫌!!お母さんに殺される!!ど、どうしよう…)


幼馴染みの雲雀に縋りたい。
だけど、骸と仲が果てしなく悪い雲雀が来たら、戦闘になる事間違い為し。

家を壊されたくない。
母に制裁を下されたくない。

だけど、こいつは追い返したい。ストーカーの南国果実を、どうしても追い返したい。

「ねぇ、そろそろ帰った方がいいんじゃない?仲間が心配してるんじゃない?」

「大丈夫です。桜子の所に行くと言ってありますので。それより、こっち来てください。立っているなんて、疲れてしまいますよ。さぁ、僕の隣にどうぞ」

「何でさり気なく隣指定してんの!?絶対に嫌!!」

「強情ですね。まぁ、そんな所も素敵ですけど」

「ひィィっ!」

ぽっと顔を赤らめて、照れ臭そうに言う骸に鳥肌が立った。
心の底から、本気で気持ち悪いと全身で感じた。

「まぁ、隣じゃなくても、座ったらどうですか?そこからだと、下着が見えそうで…。僕のが勃ってしまいそっ!!」

「気持ちわりぃーんだよ!!!!!一変輪廻行って、そのまま帰って来んな!!!」

持っていた鞄を、骸の顔面に投げ付ける。見事にヒットし、骸の顔が赤くなる。

持たない。このままこいつの相手していたら、喉と頭の血管がイかれてしまう。
「はぁ…」と溜め息を吐き、骸が座っている反対側にあるベッドに腰掛ける。けど、それがまずかった。

「桜子」

「な、何よ…」

急に真面目な声音で名前を呼ばれて、警戒しながら返事を返す。
骸の真剣な表情は、悔しい事に格好いい。一瞬ドキッとしたが、何かの間違いだった様だ。

「パンツが見えて勃ってしまいました」

「ばっ!!ばっかじゃないの!!っていうかお前今すぐ帰れ!!」

顔を真っ赤にして立ち上がり、怒気の含んだ声で叫び、扉を指差した。

格好いいわけない!!
こいつはただの変態南国果実!!

本当に今直ぐ帰って欲しくて仕方ない。しかし骸は、帰る気さらさらなし。寧ろ、ヤる気満々。

「パンツ白とか、かなり興奮しますね」

しまった!と、スカートを掴んで必死に隠す。

立ち上がった時に、これまたばっちり見えてしまったらしい。
顔を真っ赤にしながら、見えない様にその場に座り込んだ。

こいつは変態なんだ!
隙なんて、絶対に見せちゃダメ!

「っもぉー!!早く帰ってよ!!変態!!」

「男は皆、好きな子の前じゃ変態ですよ」

「なっ!!」

いきなり、骸の顔が目の前にあった。驚きのあまり叫ぼうとするが、それは出来なかった。
急に、唇を塞がれてしまい、声が出ない。

「んっ!」

抵抗しようと、骸を押し退けてみるが、びくりとも動かない。
抱き締められて、全く体が動かない。いくら喧嘩が強いとは言え、所詮男の力には叶わない。そう思ったら、怖くなった。きっと骸は、良からぬ事を考えているに違いない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ