よろず夢置き場

□変態に恋されて
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「そこの変態!関係者以外立入禁止だ!!」


「愛する桜子の恋人なので、立派な関係者です」


「……ふざけんな」





変態に恋されて





あの時、どうして一緒に行ったりなんてしたんだろう…。

(自分…マジ馬鹿だ…)

応接室で、頭を抱える日常に嫌気が差してきた。
毎日毎日あいつは懲りずに会いにくる。何度追い返しても、あいつには全く効いてない。

あんなふざけた野郎を、好きになんて為る訳がない。

ちらりと机の方に視線を向けると、真剣な表情で雲雀が書類を整理している。

(せめて、あのくらい真剣ならなぁ…)

別に、雲雀が好きな訳じゃない。まぁ、強いから憧れてはいるけれど、敬慕であって思慕ではない。
再びため息をついていると、雲雀が手を止めて顔を上げた。

「ねぇ」

「何?」

「そのため息どうにかして」

「ため息の元凶を殺って下さればなんとかなります」

「戦いに興味ない奴殴っても詰まらない」

(いつも容赦なく喧嘩吹っかけてんじゃん!!)

そう言ってやりたいけど、制裁を食らうだけだから我慢。
頼みの綱の雲雀が動かない以上、どうする事も出来ない。
いつもあいつの顔見る度に殴りかかっていたのに、ストーカーになってからは全く興味を示さなくなった。


まぁ、誰だって変態には近付きたくないよね。うん。


「はぁ…もういい…。見回り行ってくる…」

「行ってらっしゃい」

落胆したまま応接室を出た。
少し問題児相手に暴れれば、気が晴れるかな…。


* * *


風紀の腕章を付けて、目を光らせて歩いていれば、誰も話し掛けてこない。
恐れられているのは、雲雀だけじゃない。風紀委員自体が、恐れの対象なのだ。


だけど、中には全く恐がらない奴もいる。


「なんであんたがいんだよ!!部外者は立ち入り禁止だっつってんでしょ!!」

「部外者なんて、悲しい事言わないで下さい。未来の旦那に」

「頬を赤らめて言うな!!絶対にあり得ない!!っつーか気持ちわりぃーんだよ!!」


なんなの!!
なんなのマジこいつ!!
どうして神出鬼没なんだよ!!

問題児に喧嘩吹っかければいいやと思っていたけど、変態に喧嘩という名のストーカーを吹っかけられた。


マジうざい!!


「桜子は照れ屋なんですから」

「これのどこが照れ!?」

「本当は僕に会えて嬉しくて仕方ないんですよね。僕も桜子に早く会いたかったですよ」

両手を広げながら、キスを迫ってくる骸。そんな南国生まれの変態に、恐怖のあまり身震いがしてきた。頭の中まで南国使用。こいつの、偏った思考の愛なんて、受け入れられる訳がない。

「ヒィィィ!!来るなぁぁ!!」

絶対イヤ!!
黙っていれば格好いいのに、口開けば変態発言しかしない真性の変態に恋されても嬉しくない!!

武器の木刀で威嚇するも、骸は全く躊躇しない。恐がりもしない。この変態は、引く事を知らない。
木刀に手を掛けて、骸はどや顔で詰め寄ってくる。

「僕と桜子の間は、こんな物では邪魔なんて出来ませんよ」

鋭い、獲物を狙う様な視線に、思わずドキッ‥とした。
こいつにストーカーをされ始めて、こいつが「格好いいけど残念な人」と言う女子の声は、何度か耳にしている。
今まで、「どこが格好いいの?」と思っていたけど、今なら女子の気持ちが少しだけ解る気がする。雲雀と同じ、猛禽類に近い何かを、こいつは持っている。
現に、沢田と知り合いらしく、沢田はこいつを見て怯えていた。


まぁ、今は冷たい視線を送っているけど…。


近づいてくる骸に、身動きがとれない。木刀を引いて、真剣な表情の骸に視線を向けた。
けれど、どう足掻いてもやっぱりこいつは変態だ!!


「さぁ桜子!!ここにサインを!!僕の愛は永遠です!」

目の前に掲げた紙を見ると、婚姻届の文字。しかも、骸の名前はすでに書いてある。

こいつ、馬鹿でしょ。
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