よろず夢置き場

□冗談じゃない!!
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盗まれるとか…



どんなけあいつは馬鹿なの!?



どうしようもない馬鹿の下にいる私は、それ以上の馬鹿って事!?



本当…





冗談じゃないわ!!





『至急守護者を集めろ!』

騒がしい廊下。
走る緊張感。

「がぁー…くぅ…」

ベッドで、大の字になって寝ている桜子の耳には、MDのイヤホンが差し込まれたまま。
大好きなMDで曲を聞いていたら、日頃の疲れがたたり、眠気に襲われて勝てなかったご様子。その証拠に、かなりだらしない格好をしている。
女の子らしくなく、気持ち良さそうに鼾をかいている桜子。決して偽らない。それが、桜子の良い所。悪い所は、少し…乱暴な所。
自分のやりたい時に、やりたい事をする。そんなマイペースな桜子とは対照的に、外はざわざわと騒がしさを増していく。

「おい桜子!!」

勢い良く扉が叩かれる。
だけど、桜子に起きる様子は全くなく、呑気な寝息を立てている。
MDの所為で聞こえないと言うのもあるし、一度寝たら、中々桜子は起きない。寝起きは、悪くはないが良くもない。寧ろ、眠い時や寝起きの方が可愛いくらい。
ただ呼んだだけじゃ、桜子は起きない。扉の向こうで呼んでいる獄寺もそう考えたのか、強硬手段に打って出た。

「おい桜子!!おっきろぉぉぉぉぉ!!!!!」

思い切り扉を蹴り破る。
その衝撃と激しい音に、さすがの桜子も意外とあっさり起きてくれた。

「ふぇ?」

起きた瞬間、何かに引っ掛かったのか、両耳からイヤホンがポロリと外れた。
寝呆け眼の桜子は、まだ眠そうな目で獄寺を見上げる。

なんでここにいる?

そう思い、扉に視線を向けると、何故か扉が壊れかけていた。
寝起きだから、今のこの状態が解らず、頭が働かない。理解なんて出来るはずがない。

「なんなの…」

目を擦りながら、桜子は迷惑そうに口を開く。
いきなり獄寺が部屋に来た。
外は賑やかだったけど、桜子は寝ていたから全く気付いていない。

「十代目がお呼びだ。早く来い」

「はぁぁ?」

一気に機嫌が悪くなる。
獄寺を思い切り睨み付け、不機嫌な態度をとる。
面倒くさい事この上ない。気持ち良く寝ていたのに、わざわざ妨げられたのは沢田の所為だと考えると、段々苛々してきた。

「いいから早く…どわっ!」

意識もはっきりしてきた桜子は、獄寺に向かって思い切り木刀を投げ付ける。しかも、後ろの壁に刺さるように、顔面に向って。 頬を掠めた様で、うっすらと赤くなっている。直撃はしていない。間一髪で、獄寺が避けたから。
桜子の、無言の黙れと言う意思表示。その意思は荒々しく、かなり乱暴で横暴なもの。
獄寺を睨み付け、思考回路は元通りになった桜子は、敵意むき出し。仲間なのに、桜子はあまり馴れ合ったりしない。まぁ、攻撃的な彼女だから、そんな性格でも納得してしまう。

「煩い…」

やっと口を開いたと思っても、好意的な言葉は絶対に口にしない。
だって、目の前の奴に好意なんてものは、全くコレっぽっちも抱いていないから。
木刀を投げられ、獄寺はこれ以上逆らわない方が良い。懸命な判断を下し、作り笑いを浮かべながら桜子に告げる。

「な、なるべく早く十代目の所に来いよ…」

一層瞳を鋭くして、獄寺を睨む。ただ、緊急事態だから、桜子を呼びに来ただけ。何も悪い事はしていないのに…。
何か言いたげな様子だけど、敢えて聞きたくない。今にも暴れだしそうな雰囲気に、獄寺は身の危険を察知して部屋から出て行った。
出て行った後も、獄寺は桜子が本当に来るかどうかが心配で。
いつだって気紛れで動く桜子が、収集を掛けて集まってくれるなんて、滅多にない。十回に一回くらいでしか、顔を出してはくれない。そんないい加減な桜子にきつく言えないのは、後でされる仕返しが怖いから。まぁ、言っても聞かないからと諦めているのも理由の一つ。

「来たら来たで、ぜってぇー暴れるしな…」

来なくていいのか来た方がいいのか…。桜子に関しては、そこのところよく解んない。
けれど、今回の件、桜子に一蹴されそうな気がするのは、きっと、獄寺だけじゃないと思う。

何を言われるか解んない。
何をされるのか解んない。

だけど、だからこそ、桜子が来た方がいい気がする。
叩かれれば、もう、こんな事は繰り返さなくなると思うから…。


* * *


「獄寺君、ほっぺたどうしたの?」

伺う様に聞いてくる沢田に、獄寺は観念して答える。寧ろ、沢田も誰にやられたかなんて、見当は付きまくっている。
獄寺君に怪我を負わせるなんて、滅多に出来る事じゃないから。特定の人しか、思いつかない。
さっきまではそんなに赤くなかったけれど、時間が経つに連れて、赤みが増していっている。

「桜子に、木刀投げ付けられました…」

どうして、こうも乱暴なんだろう…。木刀持っている女の子なんて、女の子じゃない。
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