よろず夢置き場

□Let's GO!
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急ぐ足音。



切れる息。



馳せる想い。



勢い良く開けた先に、あなたがいるから…。





Let's GO!





「ねぇ草壁」

「どうされました?」

応接室にひょこっと顔を出した桜子に、草壁は不思議そうな表情で問い掛けてきた。

いつもの光景。
当たり前の光景に、一人足りない。それだけで、不安になる。

「恭弥知らない?」

子首を傾げながら、桜子は問い掛けた。さっきから探しているのに、彼は見つからない。
電話をしてみたけど、出る気配が全く無い。メールを送っても、中々返事が返って来ない。
桜子は探すのを諦めて、部下である草壁に聞く事にした。
部下なら、上司の行きそうな場所くらい解るだろう。

「委員長ですかぁ…。見回りに行ったのは解るんですが、今どこにいるのかはちょっと…」

見た目とは違い、丁寧に答えを返してくれた草壁。
解らないとなると、恭弥はどこにいるんだ…?
桜子は再び考え込む。すると、ある一つの場所を思いついた。

「あっ!あそこかも…」

うん。多分あそこ。
まだ探してないし、恭弥はあの場所がお気に入りだから。
早くに思い付かなかった自分が情けなくて悔しくて、でも早く会いたくて仕方なくて。

「ありがとう!」

去り際に草壁にお礼を言い、桜子は勢い良く駆け出した。
解ったら、もうこの衝動には勝てない。
授業が終わり、急に恭弥に会いたくなった。一度応接室に来たけど、恭弥がいなかった。校舎を一通り探したけど、恭弥は見付からなくて、草壁に聞きに来たのだ。

会いたい。
会いたい。
会いたい!
どうしようもなくて、とにかく会いたくて会いたくて。

足が止まらない。
想いが馳せていく。
ドキドキして、だけどワクワクもして。

こんな気持ち、恭弥しかくれない。ううん。恭弥以外からなんて、欲しくないし嬉しくもない。
恭弥だけにもらうから、特別なんだから!

あの場所に着き、勢い良く階段を駆け上がる。一気に駆け上がり、重たい扉を開ける。
開けた先には、綺麗な青い空と、恭弥がいた。

「恭弥!!」

嬉しさのあまり、思わず叫んだ。そして、勢い良く駆け寄り、思い切り抱き付く。
笑顔を浮かべて、驚かない。抱き付く桜子を、普通に抱き留めた。
いつもの事。だから、驚く方がどうかしている。

「見付かったか」

「どこ探してもいないんだもん!メール送っても返って来ないし…」

不貞腐れながら言う桜子に、恭弥はあっ!という表情を浮かべた。
不良が喧嘩をしていると聞いて、急いで応接室を出た。まぁ、喧嘩をしていたのは、沢田を庇った獄寺の無用な庇護だったのだが。
多分応接室を出た時に、忘れてしまったんだ。

「忘れたみたいだね」

「もぉー!まぁいいや。会えたし」

怒るものの、今こうして会えた嬉しさに勝るものなんてない。
桜子は再び笑顔になり、恭弥に抱き付く。
風紀委員長の雲雀に抱き付けるのは自分だけ。特別な存在になれた事が嬉しくて、恭弥の言動に、一喜一憂する。

本当に嬉しくて。
幸せ過ぎる毎日に、笑顔が止まらない。

「そうだね。このままデートにでも行くかい?」

もう今日の分の巡回は終わり。
これから、一緒に町に繰り出す。

「うん!」

馳せる想いを足音に乗せて、あなたの胸に一直線。

どこにいても。
何をしていても。

あなたの事しか見えなくて。
あなたの事しか想えなくて。

抱き締めてくれるあなたの腕に、Let's GO!





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