よろず夢置き場

□1Week Love Story.
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「また…お話してくれる?」

「あぁ…。別にいいぜ」

「ありがと!」

無邪気に笑う桜子。
桜子の笑顔に、和ませられていく。
桜子の笑顔が、また見たい。
なぜか、そんな思いがこみ上げてきた。
いつも笑っていて欲しい。
そんな思いがこみ上げてきた。
この気持ちをなんて言うかなんて、一護には解らない。
一護に手を振り、桜子はフラフラっとその場を去っていった。
まだ、やることがある。
桜子には、やらなければならないことがあるのだ…。



─2 days─



一護は、寂しそうにブロック塀に座り、足を振っている桜子に声をかけた。

「元気ねぇな。どーしたんだよ」

「あっ…一護!!」

しかし、一護を見た途端に、昨日の無邪気な笑顔を浮かべてくれた。
それが嬉しくて、可愛くて、思わず顔が緩んでしまう。けど、らしくないと緩むのを我慢。

(やっべぇーなぁー…)

桜子から視線を逸らし、一人で耐える一護。
傍からみたら、すごく怪しい人物に写っている。
わけの解らない桜子は、頭の上に疑問符を浮かべて、一護を見ていた。

「一護?どーかしたの?」

「いや…。っつーかどーかしたのかは俺の台詞だ」

「えっ…」

「寂しそうにしてたじゃねぇか」

「えへへ」

笑って誤魔化そうとする桜子に、一護は聞いてはいけないのだと感じ、口を閉ざした。
嫌がっているのに、無理に聞くなんてことは出来ない。
しかし、先ほどの寂しそうな表情から一変。桜子は昨日の様な無邪気な笑顔へと表情を変えた。
その笑顔はやはり可愛くて、思わず桜子を寄せたくなるほどだった。
その反面、なぜそう思うのか、一護は自分の心に戸惑いを抱いていた。
この気持ちが解らない。
なんという気持ちなのか…。

桜子を可愛いと思う気持ち。
抱き寄せたいと思う気持ち。

今まで、女性をそう思うことがなかった。
だから、これが初めての気持ちで、戸惑うしかできなくて…。
でも、それを桜子には知られたくないから、平然を装う。

「そういえば、もう学校終わったの?早いんだね」

──ギクッ…!

「あっ!あ、あぁ…」

桜子の何気ない言葉に、一護は心臓が止まりそうになった。
明らかにおかしい一護の態度に、桜子は気付いていない。
意外なところを付かれ、一護は言葉に詰まる。

(な…なんで俺こんなに動揺してんだ…)

今にも冷や汗が出てきそうになるのをどうにかしようと、一護は慌てて話を変えようとした。そして、それも空回り。

「きょ、今日は天気がいいなぁーアハハハ」

「一護…大丈夫?っていうか天気良くないけど…」

晴れてはいない空をみて、桜子は不思議そうな表情を浮かべた。
明らかにおかしい一護の態度。
疑う目で見られている中でも、一護は必死だった。

(言えるわけねぇだろっ!桜子に会いたくて一時間早退したなんて…)

そんなこと、口が裂けても言えない。
ただでさえ、自分でもよく解らない行動に焦っているのに、桜子に言ったら、大変なことになりそうな気がする。

「本当だなぁー」

誤魔化すのに必死で、これ以上は持たない気がする。
また何か言われたら、完全に取り乱してしまう。そんならしくない行動を、桜子の前ではとりたくない。
必死で取り繕い、一護は己を保つ。

「あっ…雨…」

「傘…」

「あんま話せなかったね」

「あっ、あぁ…」

寂しそうな桜子の表情。
そんな顔をして欲しいわけじゃないのに…。
桜子には笑っていて欲しいから。桜子が笑ってくれる方法が、どこかにあるはずだ。
探さなくては…。

雨も降ってきたことだしと、桜子と一護は別れた。
桜子に背を向けた一護。その背を見て、再び寂しそうな表情を浮かべた。
そして、そのまま一護に背を向けて、桜子は歩き始めた…。



─2days after─



びしょ濡れで帰ってきた兄を心配して、妹の遊子が駆け寄ってきた。

「お兄ちゃん!そんなに濡れてどーしたの?傘持って行かなかったの?」

「わりぃ…一人にしてくれ…」

「えっ…お兄ちゃん…?」

元気のない兄。
しかし、遊子には心配することしかできない。
不安そうに兄を見ている遊子は、泣きそうな表情を浮かべていた。
しかし、今の一護には、可愛い妹のことですら気にする余裕なんてない。
桜子の悲しそうな表情が頭から離れなくて…。
気になるのに、深くは踏み込めない。
まだ会って二日目なのに、こんなにも気になるなんて…。
自室の扉を開け、軽く濡れた体と髪を拭き、着替えてから、一護はベッドに身を投じた。

『えへへ』

あの時の彼女の誤魔化しの表情は、何でもないという顔ではなかった。
何かあるのに、何も話してはくれない。
ただの話し相手。桜子にとったらそれだけの関係でしかないけど、一護の中ではそれだけで終わりたくない。そんな気持ちがあった。
彼女から、話し相手に選んでくれた。それは、自分に霊が見えるからで、それ以外の理由はない。
そんな単純な理由でしかない。
必要としてくれている以上は、力になってあげたい。
桜子の中にある悲しみを、取り除いてあげたい。出来るなら、自分の力で、桜子を救ってあげたい。
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