よろず夢置き場
□ファンキーモンキーベイビィ+その後の二人編+
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あいつ等に、見せてやりたいよ…。あたしが、いかに幸せかを…。
絶対に、羨ましがるだろうな。
「桜子」
「へ?」
急に名前を呼ばれて、思考を切り替える。
すると、やはりそこには不適な笑みを浮かべている恭弥がいる。
その不適な笑みに弱いって、知っててやってるとしか思えないんだけど…。って今は違うよ。
歩を進めながら、恭弥は口を開いた。
「コロコロ表情変わって可愛いけど、傍から見たら怪しいよ」
「あ、ごめん…自覚なかった」
そんなにコロコロ変わってたかなぁ…。本当に自覚ないや。
ってか、今恭弥可愛いって言ったよね?聞き間違いじゃないよね?
なんか…凄くくすぐったい。
あたしのこと「可愛い」なんて、恭弥しか言ってくれないもん。
聞き慣れないからとか、そんなんじゃなくて、単純に嬉しくて。幸せで、胸を支配される。
恭弥に言われる「可愛い」が、きっと一番嬉しいから。
あ、また百面相してるかも…。気をつけなきゃ。けど、恭弥なら「可愛い」って言ってくれるからいいか。
絶対に、沢田や獄寺はいわねぇーしな。あ、昔の仲間の奴等もな。
恭弥だけが言ってくれれば、あたしはそれだけで、幸せで満足だけどね…。
* * *
「なぁ、マジでここなのか?」
「間違いない。ここでトップを見た奴がいたからな」
「元気にしてっかなぁ…?」
「元気だろ。トップは不死身だからな」
「そうだな」
校門に、怪しい人影が二人。
明らかに、並中生徒ではない。
こちらを覗き込んでいる姿は、不審者以外の何者でもない。
そんな二人を、偶然にも、巡回中の草壁が発見。
どこからどう見ても怪しい二人に、草壁は威厳に満ちた表情で、警戒しながら話し掛ける。
「そこ!!並中に何の用だ!?」
草壁に話し掛けられ、二人は余計怪しい行動を見せる。
「リーゼント!?すげぇー…初めて見たぜ!!」
「すげぇー…ま、俺がリーゼントした方が格好いいけどな」
「果てしなく興味ねぇー…」
(黒曜の制服…)
以前、黒曜の生徒に喧嘩を売られたことがあった。それ以来、並中風紀委員は、黒曜生徒に対して敏感になっている。
(委員長に知らせなくては…)
草壁は、一番懸命な判断を下した。黒曜中に喧嘩を売られて、一番危害を加えられたのは、雲雀だから。
雲雀に連絡を取ろうと、草壁は携帯を手にした。
しかし、二人の余計な言葉で、掛ける事が出来なかった。
「ここに神崎桜子っていう喧嘩の強い子いるだろ!!会いに来たから会わせろ!!」
「えっ…桜子さんに…?」
「早くしろ!!」
(どういうことだ…?)
どうして、黒曜の生徒が…?
わけが解らずに、草壁は携帯を握り締める。
どう考えても、この二人が並中に危害を加えるとは思えない。かなり脳天気な雰囲気を持つ二人が、喧嘩をしに来たとは、到底思えなかった。
考えられることは一つ。
桜子が、黒曜からの転入生という事。
けれど、それを雲雀が知ったら…。
(早く知らせないと!!)
急いで、雲雀の番号を表示。
しかし、またもや掛ける事が出来なかった。
「あっ!勝手に校舎に!!」
「会わせる気がないなら、こっちから乗り込んでやる!!行くぞ」
「おう!!」
急に校舎へと走り出した二人を、草壁は必死に追い掛ける。
不吉な予感がする。
その予感は、確実に当たる事になるだろうな…。
* * *
「暇ですねぇー」
「暇だねぇー。最近、桜子さんは雲雀さんにべったりだし…」
「恋人だから、仕方ねぇーのな」
雲雀と桜子が付き合い始めてから、何となく元気がない獄寺。
無理もない。ひそかに狙っていた女の子を奪われたのだから、元気もでないだろう。
失恋した獄寺に、沢田は「大人しくて調度いいや」位にしか思っていない。慰めたは慰めたが、あまり言うと賑やかになってしまうから、適度に慰めただけ。
意外に酷い沢田に、マイペースな山本。獄寺が、失恋した事を知っているのか知らないのか…。
雲雀と付き合い始めてから、全くと言っていいほどに、沢田達に絡まなくなって来た桜子。
煩いけど。賑やかだけど、なんだかんだで楽しかった。
同じクラスなのにも関わらず、授業にすらあまり出ていない。
するとそこへ、噂をしていた桜子と雲雀が通り掛かった。
桜子は、自分のクラスだと解ると、教室にいる京子に手を振っていた。沢田達は、丸っきり無視。
「なんか…遠い人って感じだよね…」
「あのヤローが傍にいるから、話し掛けられないッスよ…」
獄寺は、桜子を奪った雲雀が嫌いで仕方ない。まぁ、嫌う理由はそれだけじゃないけれど…。
楽しそうに話す二人を、遠くから見詰めることしか出来ない。
奪いたいけど、桜子の気持ちが明らかな以上は、行動になんて起こせない。振り向くわけがないから。
「確か…」
ゾクッ‥
言いかけて、沢田は身に覚えのある寒気を覚えた。