よろず夢置き場

□ファンキーモンキーベイビィ+その後の二人編+
2ページ/7ページ


あいつ等に、見せてやりたいよ…。あたしが、いかに幸せかを…。
絶対に、羨ましがるだろうな。

「桜子」

「へ?」

急に名前を呼ばれて、思考を切り替える。
すると、やはりそこには不適な笑みを浮かべている恭弥がいる。
その不適な笑みに弱いって、知っててやってるとしか思えないんだけど…。って今は違うよ。
歩を進めながら、恭弥は口を開いた。

「コロコロ表情変わって可愛いけど、傍から見たら怪しいよ」

「あ、ごめん…自覚なかった」

そんなにコロコロ変わってたかなぁ…。本当に自覚ないや。
ってか、今恭弥可愛いって言ったよね?聞き間違いじゃないよね?

なんか…凄くくすぐったい。
あたしのこと「可愛い」なんて、恭弥しか言ってくれないもん。
聞き慣れないからとか、そんなんじゃなくて、単純に嬉しくて。幸せで、胸を支配される。
恭弥に言われる「可愛い」が、きっと一番嬉しいから。

あ、また百面相してるかも…。気をつけなきゃ。けど、恭弥なら「可愛い」って言ってくれるからいいか。

絶対に、沢田や獄寺はいわねぇーしな。あ、昔の仲間の奴等もな。

恭弥だけが言ってくれれば、あたしはそれだけで、幸せで満足だけどね…。


* * *


「なぁ、マジでここなのか?」

「間違いない。ここでトップを見た奴がいたからな」

「元気にしてっかなぁ…?」

「元気だろ。トップは不死身だからな」

「そうだな」

校門に、怪しい人影が二人。
明らかに、並中生徒ではない。
こちらを覗き込んでいる姿は、不審者以外の何者でもない。
そんな二人を、偶然にも、巡回中の草壁が発見。
どこからどう見ても怪しい二人に、草壁は威厳に満ちた表情で、警戒しながら話し掛ける。

「そこ!!並中に何の用だ!?」

草壁に話し掛けられ、二人は余計怪しい行動を見せる。

「リーゼント!?すげぇー…初めて見たぜ!!」

「すげぇー…ま、俺がリーゼントした方が格好いいけどな」

「果てしなく興味ねぇー…」

(黒曜の制服…)

以前、黒曜の生徒に喧嘩を売られたことがあった。それ以来、並中風紀委員は、黒曜生徒に対して敏感になっている。

(委員長に知らせなくては…)

草壁は、一番懸命な判断を下した。黒曜中に喧嘩を売られて、一番危害を加えられたのは、雲雀だから。
雲雀に連絡を取ろうと、草壁は携帯を手にした。
しかし、二人の余計な言葉で、掛ける事が出来なかった。

「ここに神崎桜子っていう喧嘩の強い子いるだろ!!会いに来たから会わせろ!!」

「えっ…桜子さんに…?」

「早くしろ!!」

(どういうことだ…?)


どうして、黒曜の生徒が…?


わけが解らずに、草壁は携帯を握り締める。
どう考えても、この二人が並中に危害を加えるとは思えない。かなり脳天気な雰囲気を持つ二人が、喧嘩をしに来たとは、到底思えなかった。

考えられることは一つ。
桜子が、黒曜からの転入生という事。
けれど、それを雲雀が知ったら…。

(早く知らせないと!!)

急いで、雲雀の番号を表示。
しかし、またもや掛ける事が出来なかった。

「あっ!勝手に校舎に!!」

「会わせる気がないなら、こっちから乗り込んでやる!!行くぞ」

「おう!!」

急に校舎へと走り出した二人を、草壁は必死に追い掛ける。

不吉な予感がする。
その予感は、確実に当たる事になるだろうな…。


* * *


「暇ですねぇー」

「暇だねぇー。最近、桜子さんは雲雀さんにべったりだし…」

「恋人だから、仕方ねぇーのな」

雲雀と桜子が付き合い始めてから、何となく元気がない獄寺。
無理もない。ひそかに狙っていた女の子を奪われたのだから、元気もでないだろう。
失恋した獄寺に、沢田は「大人しくて調度いいや」位にしか思っていない。慰めたは慰めたが、あまり言うと賑やかになってしまうから、適度に慰めただけ。
意外に酷い沢田に、マイペースな山本。獄寺が、失恋した事を知っているのか知らないのか…。

雲雀と付き合い始めてから、全くと言っていいほどに、沢田達に絡まなくなって来た桜子。
煩いけど。賑やかだけど、なんだかんだで楽しかった。
同じクラスなのにも関わらず、授業にすらあまり出ていない。

するとそこへ、噂をしていた桜子と雲雀が通り掛かった。
桜子は、自分のクラスだと解ると、教室にいる京子に手を振っていた。沢田達は、丸っきり無視。

「なんか…遠い人って感じだよね…」

「あのヤローが傍にいるから、話し掛けられないッスよ…」

獄寺は、桜子を奪った雲雀が嫌いで仕方ない。まぁ、嫌う理由はそれだけじゃないけれど…。
楽しそうに話す二人を、遠くから見詰めることしか出来ない。
奪いたいけど、桜子の気持ちが明らかな以上は、行動になんて起こせない。振り向くわけがないから。

「確か…」


ゾクッ‥


言いかけて、沢田は身に覚えのある寒気を覚えた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ