よろず夢置き場

□SECRET LOVERS/おまけ1/おまけ2
1ページ/5ページ


久し振りに再会した幼馴染みは…





最強無比になっていた…。





SECRET LOVERS





「邦枝葵が、関東制圧して帰って来たらしいぜ」

クイーン帰還の話が飛び交う中、それは、静かにやってきた。
それを聞いて、古市は一目散に食らいついたが、男鹿はその話を上の空で聞いていた。
クイーンが帰還した為、校内は少ないが女子が戻って来た事に少々浮かれ気味。そして古市は、ナンパに気合いをいれる。
不良率百二十%を誇る石矢魔高校なのだから、勿論、帰って来た女子も不良な訳で、まともな女子なんて、誰一人としていやしない。それでも、女の子大好きな古市には関係ない。
あまり女子に興味のない男鹿は、古市が騒ぐ意味が解らずに、古市を軽く受け流すだけ。
「クイーンを見に行こう!」と言う誘いに、中々腰が上がらない。

「ほら!男鹿行くぞ!」

「だから、興味ねぇーんだよ」

「お前それでも男か!?男に鹿と書くのに、お前は男じゃないのか!?」

「関係ねぇーし。っていうか意味わかんねぇーし。古市バーカ」

「てめぇーが馬鹿だ!!ほら早くしろ!!」

半ば無理矢理引っ張られた男鹿は、ベル坊を背中に背負いながら、渋々重たい腰をあげた。
背中にしがみついているベル坊は、意味も解らずに「ダァー」と愛らしい声をあげている。
女子がいるという滅多にない事に、古市は周りが見えていない様子。早く、クイーン邦枝が見たくて仕方ないのだ。
そのまま腕を引っ張られて、男鹿は廊下へと連れ出された。そして、邦枝の元へ強制連行しようと歩き始めた瞬間、それは突然やって来た。
何の前触れもなく、突然に…。

「辰巳…?」

「あ?」

いきなり背後から、しかも誰も呼んでない名前で呼ばれ、男鹿は怪訝な表情で振り返った。
校内で自分を名前で呼ぶ様な奴なんていない。そんな親しい奴は、いないはず…。

しかし、振り返って納得した。あぁ…と、懐かしさに胸を支配された。

「桜子…」

久し振りに呼ぶ名前に、懐かしさを含ませた。
ここ数年、全く会っていなかったから、どうしているのかなんて事を、考える事すら忘れていた。
どうしているのかなんて考えても、行き着く答えは「喧嘩をしてるんだ」に終わってしまい、その内「あいつは死なない」という安心に変わっていった。だから、心配したって仕方ないから、考えない様にしていたのだ。
考えてしまったら、別の感情が込み上げて来て、訳が解らなくなってしまうから。
「忘れた」と言うよりは、「忘れたフリ」の方が正しい言い方。

女子に声を掛けられた男鹿を珍しく思いながら、古市も振り返った。そして唖然とし固まった。

「え?」

(えぇぇぇー!!ちょっと待て!!何この子!?メッッッチャクチャ可愛いですけどぉー!!男鹿め…こんな可愛い知り合いがいるなら紹介しろよ!!ん?いや待てよ?今この子…男鹿の事名前で呼ばなかった?…幾ら知り合いだからって名前で呼ぶのって何?…っていうか男鹿と何な訳!?どんな関係な訳ぇぇぇぇぇ!!??)

思考回路がショート寸前。今すぐー会いたい…じゃなくて、頭がパンクしてしまい、古市は何を聞きたいのかも上手く定まっていない状態。
頭の中で整理しようとするが、衝撃のあまり何を言いたいのかも解らず、口から言葉が出て来ない。
長年男鹿と友達と言うものをやって来たが、男鹿の周りに女の子を見た事なんて一回もない。
姉貴と一緒にいるのはたまに見るが…。
こんな可愛い女の子と一緒にいる所なんて、見た事がない。

「久し振りだね。元気だった?」

「あぁ。桜子は?」

「相変わらずだよ」

「そうか…」

安心したような男鹿の表情に、桜子はふっ‥と笑いかけた。
久し振りに見る姿が変わっていなくて、お互いに安心した。
変わらず、喧嘩三昧の毎日を過ごしている桜子。
桜子はあるレディースに所属していて、一週間前に遠征から帰って来たばかり。
男鹿の一つ年上で、幼なじみ。
中学は同じだったが、桜子が中三の頃に今所属しているレディースに入ってしまい、ろくに学校にも来ていなかった。だから、中二から全く会っていないのだ。

人伝に、桜子がレディースに入ったのを知った。入る前から学校に来ていなかったし、連絡をしようにも番号を知らないから、連絡のしようがなかった。
所詮は幼なじみ。そんなに深い繋がりなんてない。当時は、喧嘩仲間なんかに「桜子先輩は?」なんて聞かれていた。
けれど、男鹿が知る訳ない。恋人じゃないし、繋げてある訳でもないから。

(あんなじゃじゃ馬…無理に決まってんだろう…)

繋いだって、すぐに逃げてしまうに決まっている。あんな猛獣、捕まえとけって方が無理だ。

ただの幼なじみ。
すぐに連絡が取れなくなる様な、そんな、浅くてすぐに切れてしまう様な、薄い関係だった。

けれど、桜子は相変わらず綺麗で、とても不良には見えない。特攻服を着ているなら見えるけれど、普通だったら絶対不良とは思われないだろう。それでも、桜子はれっきとした不良。

「あんた、東邦神姫の二人をやったらしいね」

「あぁ」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ