よろず夢置き場

□LOVERS
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そっと、息が掛かる程の距離で…。





LOVERS





「ねぇ一護」

「あぁ?」

ベッドに寄り掛かっている一護の真上から、ベッドに乗っかったまま顔を覗かせた。
あたしが一護を見下ろして、一護があたしを見上げている姿勢。

首、痛そうだな…。

「今日は退屈なの?」

あたしの唐突な問い掛けを、瞬時に理解した一護は、見上げていた視線を剥がして、体ごとあたしに向き直った。
一護の副業は知っている。だから、一護が毎日忙しく刀を振っているのも知っている。
現場を見た事がないから、どんな風に振っているかなんて知らないけど、一護が強いという事だけは確信持って言える。

「今ん所な」

「ふーん…」

「あんま興味ないなら聞くなよ…」

返事をそう取った一護は、少しだけ呆れながらそう言った。
別に、興味ない訳じゃない。ただ単に、こうしてのんびり過ごせる時間が無かったから、何すればいいんだろう…と考えながらの返事だったから、気の抜けた返事になってしまっただけ。

恋人になってから、まだ一週間しか経ってないし、友達の期間が長かったから、何をすればいいのか解らない。
友達だった頃には、こうして一護の部屋で二人でまったり…なんて事が無かったから、恋人としてどう接しればいいのか解らない。
ただ一緒にいて、まったりしていればいいのだろうか…。


それじゃぁ、なんか、物足りない気がする。


「一護の事だもん。興味がない訳じゃないよ。ねぇ、一護」

「何だよ」

「恋人らしい事って、何すればいいの?」

「恋人らしい事…?」

考え込む一護。
友達として接していたんじゃ、付き合った意味がない。
こんな風に、まったりしているだけじゃ、一護の傍にいる意味がない。
もっとこう、お互いが大切で手放したくないと思える何かがないと、しっくり来ない。

何か思い付いたのか、一護はあたしと視線を合わせた。
不思議がっているあたしの唇に、一護は素早く唇を重ねた。
それが一瞬の事で、理解出来ないあたしは、ただ固まる事しか出来なかった。

「こういう事、すればいいんじゃねぇの?」

一気に、顔が真っ赤に染まっていくのが、自分でもすぐに解った。
笑った一護が凄く格好よくて、あたしはずっと、一護から離れられないんだろうなぁ…と確信した。

「一護の馬鹿…」

精一杯の強がりを見せるけど、一護は笑って「おう」とだけ言った。

恋人としての一歩、やっと踏み出せた。
物足りなかったのは、一護からあたしへの愛。

一護で一杯になったから、もう満足だ…。





執筆完了【2009/10/08】
更新完了【2010/04/03】
修正加筆【2014/01/16】
 

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