よろず夢置き場

□心地いい場所〜sweet room〜
1ページ/4ページ


君の傍が、一番心地良いから。



離れられない…。





心地いい場所
〜sweet room〜






「待ってってね。ハニー」

白蘭にそう言われてから、一時間が経過した。
ボスの会合とか何とかに出掛けた白蘭を、この広い部屋で待つ。
何時も白蘭が使っている机の傍にあるソファーに座り、ただひたすら待つ。

「まだかなぁ…」

まだ、一時間しか経っていない。それにも関わらずに、もうずっと待っているかの様な錯覚に陥った。何年も、何十年も待っているかの様に、時が止まっている。


心配?


不安?


そんなんじゃない。
少し変わった奴だけど、一ファミリーの頂点に君臨している人。だから、何かあったんじゃないか…とか、抗争に巻き込まれたんじゃないかなんて不安や心配なんてしていない。
だって、何かあっても切り抜けられるし、抗争に巻き込まれても、白蘭はミルフィオーレのボスで最強に強いんだから、巻き込んだ側が可哀相と思うだけで、心配で泣きそうなんて事はない。
この、ただ広いだけの部屋で待つ事なんて何時もの事だし、二時間や三時間もすれば、白蘭はひょっこりと帰ってくる。
だから、心配や不安なんて、するだけ無駄なんだ。ただ、広い空間で時間が過ぎるのを待つだけ。
仕事なんて片付けちゃったし、他にやる事なんてないから、何もする事がない。
白蘭の机の上に散乱している書類は白蘭の仕事だから、やるわけにもいかない。また入江に怒られるから。
開けっ放しのマシュマロの袋からは、数個が袋から飛び出していた。それを食べようかどうしようか悩むが、やっぱりいいやと腰を浮かさなかった。

以前、白蘭の仕事を手伝ったら、あまりにも早い仕上がりに、手伝ったのがばれてしまい、かなり入江に怒られた事があった。それ以来、白蘭の仕事は極力手伝わない様にしている。

あんな怖い奴に、もう怒られたくない…。

白蘭は、仕事を片付けるのが相当遅い。遅いと言うか、遊び回っているから、仕事をあまりしない。
要は、サボっているだけ。サボらなければ、結構仕事早いのに…。でも、何を言っても無駄だから、何も言わない。代わりに、入江の説教が入るけどね。仕事をしない白蘭が悪い。

「つまらないなぁ…」

ぼそっと呟き、部屋を見渡した。
ただ待っているだけなんてらしくない。だけどする事なんてない。

「そう言えば、レオ君何処行ったんだろう…」

辺りを見渡していて気が付いた。
何時も、白蘭の身の回りの世話をしているレオ君の姿がない事に。
白蘭がいないと、レオ君もいなくなる気がする。

「着いてってるのかなぁ…」

レオ君がいれば、話が出来るから大分時間が経つのが早いのに、こういう時に限っていないなんて…。

まぁ、いいんだけどね。

そう言えば、白蘭と出会った時は、まだレオ君じゃなかったな…。
レオ君の前の人は、真面目で頑固な人だったから、白蘭もあまり好きじゃないって言っていた。けど、レオ君はからかい甲斐があって好きだと話していた。確かにレオ君可愛いし、白蘭の気持ちよく解る。話も、たくさんしてくれる。
前の人は、仕事人間であまり話もおもしろくなかったから、話していてもつまらなかった。
白蘭もそれを解っていたのか、早く帰って来てくれていた。
いつも帰ってくると、慌ただしい足音が聞こえて来た。だけど、レオ君か来てから、それも無くなった様な気がする。レオ君来てからまだ日が浅いから、確実じゃないけど…。

「入江も、いいの寄越してくれるじゃん」

レオ君が白蘭の所に来たのは、入江の命令だったとか…。
白蘭がそんな様な事を言っていた気がする。
たまには、入江も良いところあるじゃん。
白蘭を待っている時間程、長いものはないから。
まだかな?まだかな?と待っている時間は、どんな時間よりもずっとずっと長くて…。
待ち遠しくて仕方ない。

「まだかなぁ…」

先程時計を見た時刻より、三十分しか進んでいない。
まだまだだなぁ…と思いながら、ソファーに寝転がり瞳を閉じた。


出会った時は、こんな未来は想像できなかった。
まさか、こんな風に白蘭の帰りを待つ事になるなんて、夢にも思ってなかったなぁ。
白蘭の部屋で、白蘭の事を思いながら待つなんて…。考えた事もなかった。

本当…。
人生って何が起きるか解らない。

まさか、白蘭の為に何かしたいとか思うなんて…。
こんなにも白蘭を好きになるなんて…。
誰よりも、白蘭を大切にして、傍にいたいと思える存在になるなんて…。


こんなにも愛しくなるなんて、考えられなかった。


最悪な出会い方。
でもそれも、運命の歯車の一つにしか過ぎなかったんだ。
白蘭と愛し合う為の、パーツでしかなかったんだ。


全ては、白蘭と愛し合う未来の為に…。


「白蘭…」

小さい声でそう呟き、ゆっくりと意識が奪われていく。意識を奪われていく中、気付いたら、傍には白蘭いてくれたらいいなぁ…と考えながら―…。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ