よろず夢置き場

□したたかな君に贈る愛
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赤に染まる教室で



君は何を思っている?



一体、誰を想っている?



教えて欲しい─…





したたかな君に贈る愛





いつも待っていてくれる。
強制したわけじゃない。
でも、それが凄く嬉しい…。


「遅かったね」

不適な笑みを浮かべながらそう言った男は、座っていた机から立ち上がる。
約束なんてしていない。
寧ろ、待っていてなんて一言も言っていない。
いつも、何も言わずに待っていてくれる。
まるで、全てを見透かしているかのように、この男は待っていてくれる。

「先生の話が長かった」

「途中で抜けて来ればいいのに」

「でも、どうせ恭弥は待っててくれるでしょ」

一瞬だけ驚いた表情を浮かべたが、すぐに穏やかな笑顔を浮かべてくれた。
穏やかというか、不適な笑み。
いつもこうして待っていてくれるんだから、何があっても待っていてくれる。
そんな確信があった。
どんなに遅くなっても、恭弥は待っていてくれる。
自惚れじゃなくて、直感的な確信がある。

「君がいないとつまらないからね」

傍にいてもいいという証。
隣にいてという願い。
同じ考えを持っている二人は、似たもの同士かもね。

戦っている姿に惚れて、一瞬で恋に落ちた。
この人の傍にいたいと、強く願った。
この人がいい。
恭弥じゃなきゃ嫌だなんて、そんな我が儘を抱いた。
でも、その我が儘は聞き入れられている。
一番、幸せな形で聞き入れられている。

「私も、恭弥が傍にいないと嫌」

隣にいない時は、不安で仕方ない。
今何してるんだろう?とか、今どこにいるんだろう?とか…。
何を…、誰を想っているのだろう?とか、凄く気になる。
最愛の人を、想っていてくれているのだろうか…。
自分のように、常に想ってくれているだろうか…。

「君って、強いくせに可笑しな我が儘を言うよね」

強くなんてない。
恭弥よりは、強くない。
弱いこと、恭弥が誰よりも知っている。
少しずつ、恭弥に歩み寄る。

「強くなんてない…」

「知ってるよ」

「変なの…」

「普段強いくせに、僕の前だと途端に弱くなる」

「甘えてるから」

「知ってるよ」

恭弥の腕に、自ら飛び込む。
嫌がったりしないで、ちゃんと抱きしめ返してくれる。
恭弥が待っていてくれる理由は、たった一つ。
一人にしない為。
一人を怖がる私を、一人にしないで、不安にしない為。
恭弥が傍にいることで、凄く落ち着く。
不安なんて、どこかに吹き飛んでしまう。
だから、いつも待っていてくれる。
教室に入って、恭弥の姿があると、凄く安心する。
赤い夕日に染まった恭弥は、いつもより憂いを帯びていて格好良い。
そんなこと言っても、恭弥はあまり興味なく返事をするんだろうなぁ…。
そこがまたいい。

「ねぇ」

「何?」

「私を待っている時って…いつもどんなこと考えてるの?」

「何…聞きたいの?」

にやりと笑い、嫌な笑みを浮かべる。
大概、こういう時の恭弥は、嫌なことを考えてる時だ。
不適な、何かを企んでいるような笑み。嫌いじゃないけど、背中に寒気が走る。
格好良いからなのか、怖いからなのかはよく解らない。

「やっ…やっぱいいかも…」

そう言って、恭弥の腕から離れようとする。
でも、それは容易なことじゃない。

「逃がさないよ」

腕を捕まれたと思った次の瞬間、背後から強く抱き締められた。
恭弥の言葉に、言い知れぬ何かを感じた。
恐怖じゃない。
不安でもない。
これはきっと…。

「きょ…や…」

ペロリと、首を舐められた。
まるで、反応を楽しんでいるかのような行動に、足が竦む。

「んっ…」

「遅れた分お仕置きしてあげようかなぁとか、ここでこういうことしたら、君はどんな反応するのかな…」

「何…それ…」

「僕の考えてることだけど?」

「何…言ってん…」

再び首に顔を埋め、赤い跡を付けていく。
強くて振り払えない腕に抱き締められ、身動きができない。
背中に走る寒気に、恭弥はにやりと笑う。

「きょう…や…ここ教室だよ…?」

「もう無理だよ。桜子が悪いんだからね。抱き付いて来たりするから」

「な…」

頬に恭弥の手が添えられた。
気付けば目の前には恭弥の顔。
ドキッとする暇なんてなくて、顔を傾けられて、唇を重ねる。
一瞬の出来事に、思考がついていかない。
気がついた次の瞬間には、息苦しさに襲われていた。

「ん…ふ…」

体を無理矢理向けさせられ、激しいキスが降ってくる。
舌を絡め取られ、上手く息ができない。
離されたと思ったら、再び角度を変えての口付け。
次第にあがっていく息。
さり気なく腰に伸ばされた手は、厭らしく動いていく。

「きょ…や…」

「色っぽいね…」

やっと離された唇。
今まで出来なかった息を取り戻そうと、呼吸を整える。

「やっ…ひゃっ!」

腰から移動してきた手が、スカートの中へと忍び込んでいく。
下着越しに秘部を触られて、体が大きく反応を示した。
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