よろず夢置き場

□たとえ、どんなに…。
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「ふーん…此処がフェアリーテイルか…」

不適な笑みを浮かべる女が一人。

高台から、街を見渡す。
そして、またにかっと口角を上げて、邪悪な笑みを浮かべた…。





たとえ、どんなに…





「おいグレイ!!また俺の顔に落書きしやがって!!」

「いつもいつも鼾がうるせぇーんだよ!!クソ炎釣り目ヤロー!!」

「んだとー!!やんのか!クソ氷タレ目変態ヤロー!!」

「悪口増やしてんじゃねぇーよ!!今日こそ決着つけてやらぁー…」

取っ組み合いの喧嘩を始める二人。しかし、そんないつもの喧嘩を、見てみぬ振りが出来ないのが一人。

「やめんか!!」

「いで!!」

「あだ!!」

二人の頭を掴み、思い切りぶつけ、喧嘩は終了。
二人の喧嘩を止められるのは、風紀委員のエルザしかいない。

「あんた達、いい加減学習しなさいよ…」

「あい!ナツの頭は猫より軽いのです!!」

「んだとハッピー!!」

呆れるルーシィの前で、魚を食べているハッピー。ルーシィの横には、まだ幼いウェンディが座り、無邪気な笑顔を浮かべている。

いつもの光景。
いつもの馬鹿騒ぎ。

お騒がせギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)はいつもこんな感じだ。

カウンターでは、看板娘のミラが居て、客の相手をしている。そんなミラの近くで、カウンターに座り、昼間から酒を飲んでいるマスター。その前には、孫であるラクサスもいる。

「賑やかじゃなぁ!」

「主に喧しいのはナツだけだけどな」

「元気があっていいじゃない」

また懲りずに、グレイと喧嘩を始めたナツ。
呆れるルーシィの横で、ジュビアがグレイを応援している。
賑やか過ぎる中、いきなりけたたましい音と共に、扉が開いた。

「じじぃ!!」

荒い声に、ギルド内が一斉に振り向く。敵襲かと、身構える一同。
どんな奴が来たのかと思いきや、そこにいたのは、想像と掛け離れた、華奢な女が一人。

セクシーな衣裳に身を包み、色気はルーシィよりも上。しかし、その顔に張りついた笑顔は、不適で、荒々しい。

女を視界に移した瞬間、マカロフとラクサスが驚きを顕にした。

「な、なぜお前が此処に…」

「な、なんでいんだよ…」

驚きと言うより、怯えているような表情に、ミラは綺麗な顔に緊張を顕にした。

あの二人が、こんな顔をするなんて…。

そして二人以外、この女を見たことがない。明らかに、フェアリーテイルの一員ではない。

「久し振りだなじじぃ。あ、ラー君もいたんだ」

「ラー君!?」

「その呼び方辞めろ!!」

「あ"ぁ"?」

ラクサスを、思い切り睨み付ける。雰囲気は、少し前のミラに似ている。だけど、その頃のミラよりは大人びていて、豊満なボディを持ち合わせている。

睨み付けられたラクサスは、小さく舌打ちをすると、女から視線を逸らした。
言い訳は出来る。だけど、後が面倒臭いから、言い訳なんてしない。いや、しない方が身の為だと、体に刻まれているのだ。

ラクサスとマカロフが怯える女。そんなの初めてで、皆が戸惑っている。

「誰…?」

「俺も知らねぇー…」

「俺もだ…」

「私もだ…。しかも、あのラクサスを…」

ルーシィ、ナツ、グレイ、エルザが口々に言葉を発した。
長年このギルドにいるグレイでさえ、見た事がない。
しかも、マカロフを「じじぃ」と呼び、ラクサスを「ラー君」と親しげに呼んでいる。

「何故、此処にいる…」

「私がマスターしていたギルドが潰れちゃってさぁ」

「潰れた…?」

マカロフが座っている隣に、腰を落とした。
脚を組むと、パンツが見えそうになった。その光景に、男達は興奮。絶叫している奴もいる。でも、全く気にする事無く、女は話を続ける。

「そっ!仲間を扱き使い過ぎて、使い物にならなくなっちゃってさぁ。つーか、問題起こし過ぎて、営業停止になっちゃったのよ」

「営業停止って…何したんだよ…」

呆れながら、ラクサスが問い掛ける。昔からはちゃめちゃだった。それは、今も変わらない様子。すると、女はケロッとしながら、話し始めた。

「此処と対して変わらねぇーよ。街一つ全壊しちゃったり、山三つくらい爆破させちゃったり…まぁ、たくさんやらかしすぎて覚えてないんだけどねー」

「街一つ全壊!!??半壊じゃなくて全壊なの!!??」

「山三つくらい爆破!!俺達より質わりぃーじゃねぇーか!!!」

「フェアリーテイル以外にも、そんなお騒がせなギルドあったか…?」

どんなギルドよりも賑やかで、どんなギルドよりもお騒がせなギルド。フェアリーテイル以外にも、そんなギルドがあるなんて…。

評義委員会なんてクソ食らえ!なギルドが、他にもあっただろうか…。いつも騒いでいるからだろうか。他のギルドのお騒がせな情報は、あまり入ってこない。

話を聞いて、マカロフは深いため息を吐いた。

「こいつは、地獄の番犬(ケルベロス)のギルドマスター…。桜子じゃ。んでもって、わしの孫じゃ」

「俺の姉貴だ」

「元ケルベロスのギルドマスター。桜子でーす」

「えっ…えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」

皆が一斉に絶叫。
ケルベロスの噂は、時々耳にしている。
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