よろず夢置き場

□馬鹿な子程、可愛くて。/馬鹿な子程、愛しくて。
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バカな子程、可愛いじゃない!





バカな子程、可愛いくて。





監督の家で、再びかなりハードな勉強会をする事になった誠凛バスケ部一同。
前回の時は、実力テストに向けての勉強会だったが、今回は違う。期末テストに向けての勉強会を開くという。

期末テストで赤点を取ると、土日に補習が待っている。そして、土日は試合の日取りとなっている為、赤点なんて許されない。
火神の破滅的な点数に、皆最初はため息しか出なかったが、火神は誠凛の主戦力。試合に出られないなんてあってはならない事。故に、心を鬼にして勉強を教えて行くしかない。

「またこのパターンかよ!!」

「恨むなら自分のバカな頭を恨みなさい!!前の順位に浮かれて勉強しないあんたが悪い!!」

実力テストの結果は、リコ達の協力のおかげで、奇跡的に上位百名の内に入れた。まぁ、緑間のお陰でもあるが、そこには敢えて触れられたくないらしい。
しかし、初めての上位成績に、すっかり舞い上がってしまい、普段からしない勉強を余計疎かにしてしまった。
もうすぐ期末テストだからと、試しにリコが問題を出した所、見事に一問も答えられなかった。それに激怒したリコは、再び勉強会を開く事に決めたのだ。
もう、恒例行事にしてもいいかも…と、リコは内心思っている。
あまりの火神の馬鹿さに、リコは怒りしか湧いてこない。リコ自身が頭がいいから、馬鹿な事が許せないらしい。
図星を指摘されたら、何も言い返せない。特に、監督には…。

「火神君、頑張りましょう」

「…またお前に国語教えてもらうのか…こうなったらまたコロコロ…」

「あんたやっぱ馬鹿!!バカ神!!期末テストはマークシート形式じゃないから、自分で考えなくちゃダメなの!!コロコロ鉛筆なんてあんまり使わないのよ!!」

「マジかよ!!絶体絶命じゃねぇーか!!」

「だから言ったでしょーが!!」

火神に吠えまくるリコに圧倒されて、何も言えない一同。黒子だけが、リコの迫力をものともしない様で、必死に火神を慰める。

「教えられる事は、全部教えます。だから、頑張りましょう」

「あぁ…」

こうなったらやるしかない。
普段寝てばかりで、ろくに授業を聞かなかった自分が明らかに悪い。だから、こうなったのは仕方ないんだ。
教えてくれるなら、誰でも構わない。試合に出られないのは痛いし、何より、自分の手でチームに勝利を届けたい。自分がいるチームで。皆と一緒に、勝ちたいから。

力なく頷き、ノートと教科書を開く。しかし、扉を叩く音が聞こえ、不意に顔を上げた。

「はぁーい」

リコが返事を返すと、静かに扉が開き、見慣れない顔が覗き込んできた。
いきなり現われた女性に驚き、一同は動きを止める。

「リーコ、勉強進んでる?」

室内にいる全員が、口を開けて唖然としている。
リコに柔らかく微笑み、優しい口調で口を開いた女性に、胸がときめいた。
綺麗な笑顔が、あまりにも眩しかったから。あまりにも、美しかったから。

「また始めたばっかりだよ」

「そうなの?あ、良かったら甘いものどうぞ。頭の働きがよくなるわよ」

反射的に、美女が持っているバスケットに視線を移すと、その中には色々な形のクッキーらしきお菓子が入っていた。
見た目はかなり綺麗で、売り物の様だ。しかし、いい匂いが鼻を掠め、出来たてなんだと理解した。
差し出されたクッキーを受け取り、リコは笑顔で言葉を返す。

「ありがとぉー!お姉ちゃんのクッキー美味しいんだよねー」

かなり上機嫌に発した言葉を、一同は聞き逃さなかった。
一瞬固まり、すぐに言葉の意味を理解。それと同時に、驚きの声をあげる。

「えっ?監督姉貴なんていたのか!?聞いてねぇーぞ!!」

「知らなかった…」

監督に姉がいるなんて事、聞いた事がない。初めて聞く真実に、戸惑いを隠せなかった。
あまり自分の事を話す様な人じゃなくても、姉妹の存在くらいは話しているもの。しかし、監督に至っては姉妹の存在すら知らなかったのだ。
姉妹の存在を知られて、何か不都合でもあったのだろうか…。


けど、あまりにも姉が綺麗だったら、話したくないかも知れない。
しかし、監督が話さなかったのはもっと別の理由。そもそも、姉がいる事自体が間違い。

「あぁー…私のお姉ちゃんじゃないわよ。お母さんの姉の子供。年上だし、昔からよく遊んでくれてたから、お姉ちゃんって呼んでるだけ」

「へぇー…そうだったのか…」

「いやぁーびびったぁ!!」

「道理で似ていないと思いました」

「私はリーコの事、妹みたいに可愛がってるんだけどねぇ!」
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