Little QUEEN〜小さなお姫様〜
□家族
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とある学園に、魔王の妹とは思えない程の、とっても可愛らしい女王様がおりました。
その女王様は少しだけ、普通の人よりも兄が大好きでした。
しかし負けじと、兄も妹を溺愛しているのです。
怒らせたら怖い、魔王の様な兄に守られながら、女王様は今日も元気に、無意識の内に可愛さをばらまきながら、皆を虜にしていくのでした…。
第1弾-家族-
「あれ?ここ…どこ?」
校舎内で迷子になってしまった花月。キョロキョロするも、周りにあるのはよく解らない教室ばかり。
普通ならこんな所で迷子になんてなるはずが無いのだが、花月は極度の方向音痴。今いる場所が解らなくて、焦るばかり。
花月は取り敢えず近くにあった階段を降りる事にした。
下へ降りると自分の教室が見え、表情に明るさが戻って来た。
「あっ!よかったぁー…ここからなら何とか解るから平気だ。早く行かないと周兄ちゃんに怒られちゃう」
胸を撫で下ろすのも束の間。花月は、慌てながら廊下を走り出した。
長くて綺麗な茶色い、ストレートロングの髪の毛を揺らしながら。
早く行かないと、部活が始まってしまうから…。
* * *
一方その頃、テニスコートではレギュラー陣がだらだらとだらけている。
男子テニス部は今日も練習に燃えているはずなのだけれど…。とっくに練習は始まっている時間。
「遅いなぁー…花月ちゃん、何やってんだろう…」
コート内には居るものの、一向に始める気配がない。
肩にラケットを担ぎながら、上の空で呟く桃城に、よき相棒のリョーマが言葉を返した。
「ほんと…遅いっすね」
どうやら、マネージャーの花月がいないからやる気が出ないらしい。
やる気が出ないのは、二人だけではない。レギュラー全員と言っても間違いでは無い。
兄である不二周助は、桃城とリョーマに冷たい視線を送っている。
「ごめんなさい!遅くなっちゃいました…」
花月の様子から、急いできたと言うのが一目で解った。
小柄な体系なのだから、あんまり無理すると壊れてしまいそうだ。
花月の登場にコート内が一斉に明るくなっていく。先程のやる気の無さが嘘の様に、皆我先にと花月に走り寄る。
けど、上手く近寄るなんて出来るはずが無い。なんせ花月は、不二の妹。
こんな可愛い妹を、溺愛しない兄なんているのだろうか…。
否いない!!
近付いてきた全員に悪魔の笑顔を向けて、近付くなと無言で威圧。
レギュラー陣以外は、あまりの恐ろしさに近付く事さえ出来ない。
けど、日頃から不二の笑顔に慣れてしまっているレギュラー陣は、そう簡単には追い払えない。
「花月…遅かったね。どうしたんだい?」
兄の周助が心配そうな表情を浮かべながら、花月の元へとやってきた。
なぜかリョーマと桃城が着いて来ている。花月に解らない様に舌打ちをするが、あまり意味はない。
「周兄ちゃん!それがね、迷子になっちゃって…」
えへっ!と舌を出して誤魔化そうとしている姿が、テニス部員の心を梟が餌を落とさない様に爪を立てるかの如く、がっしりと掴んで離さない。
「気を付けてね。花月はすぐに迷子になるんだから」
「はぁい」
のほほんとした笑顔でニコッと笑い掛ける。
花月と不二が話をしてると、邪魔をする様に…っというか無邪気な笑顔を浮かべてはいるが、邪魔する気満々の英二が、花月に抱き付いてきた。
「花月ちゃぁぁぁぁぁん!!今日も可愛いにゃぁ!」
「菊丸先輩…!!急に抱き付いて来ないでください…」
花月は顔を真っ赤にしながらも、英二の腕の中に納まっている。
すると、周りから罵声が飛んできた。けれど、英二は綺麗に無視して花月に抱き付いている。
可愛い顔して割と良くやる英二。
そんな英二に、不二は絶対零度の微笑みを浮かべている。
笑顔だけど何か恐い。背後に、はっきりと死神が見える。
花月は何で周りがこんなに賑やかなのか全く理解できなく、英二の腕の中でおとなしくしていた。
怖さのあまり体が固まり、花月を離せなくなった英二。
「いつまで抱き付いてるの?死にたいのかなぁ?」
「んにゃぁぁぁ!!」
「死にたいんだね」という台詞が聞こえた瞬間、英二は叫び声と共に花月を離す。
その後、呆れた手塚に言われやっと練習開始。
まぁ、いつもこんな感じなのだ。
* * *
花月の日課は、休み時間毎に周兄のクラスへ行く事。
今日も休み時間に周兄の元へ遊びにきている。
いつも付き添いと言う形で、何故か同じクラスのリョーマが着いて来るのだ。
まるで小さいお姫様を守るナイトのようだ。
周兄のクラスへ行くのはいいのだけれど、その度に女の先輩達に抱き付かれる程花月は人気者。本人は全く気付いていないのが不思議なくらいである。
「周兄ちゃん」
入り口付近にいる周兄に声を掛けると、にこっと笑いながら花月の元へとやってきた。
それと同時に花月を見つけた女の先輩達も、花月の元へとやってくる。