企画(ぎんたま)
□00時00分のI Love You.
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願うまでもない願い。
00時00分のI Love You.
「んー…」
体に重みを感じて、私は魘されながら目を覚ました。
私は恋人の腕の中。覆い被さる様にして、きつく抱き締められている状態。
「ねぇ」
頭上から、規則正しい寝息が聞こえてくる。声を掛けてみるが、気持ち良さそうに寝ている。身動きすら取れない。
もぞもぞと動いてみるが、起きる気配はない。
何で、こんなに強く抱き締められているのかが解らない。
いや、経緯は解る。経緯と言うかこうなった理由は解る。
銀時に、いきなり訳の解らない事を言われた。
『秘め初めがあるんだから、秘め終わりがあってもいいんじゃねぇー?』
『意味解んない』
『まぁまぁ』
『いやいや意味解んないから!』
『今年最後だから…な?』
そして、襲われた。
本当に意味解らない。
ただ自分がヤりたいだけだろ…。
襲われて、今に至る。
全てが終わり、こうして銀時の腕の中で落ち着いた。そのまま眠りに就いてしまった様子。
「ねぇっ!」
「んー…」
頭で、銀時の顎をぐいぐい押し上げてみる。すると、苦しかったのか、呻き声が聞こえてきた。
起きたかな?と思うけど、それ以上の返事が来ない。もう一度、思い切り頭で顎を攻撃。
「ねぇってば!」
「いっ…!んだよ…」
やっと起きた。
呆れながら返事を返してくれた。寝ぼけてるのか、無理矢理起こされて不機嫌なのか、何時もより声が低い。多分両方だろうな。
「重い!動けない!」
「いいじゃねぇーか。銀さんの愛よりかりぃーだろ」
「苦しいの!」
「わぁーったよ…」
そう言いながら、抱き締めていた腕を緩めて、私から退いた。
体が軽くなり、私は洋服を探す為起き上がった。銀時に脱がされたから、何も着ていない。行為が終わった後、下着は履いたみたいだけど、この格好じゃさすがに寒い。
周りを見渡すと、足元に無造作に投げられた着物を発見。見付けたと同時に、幾らか目が覚めた銀時も起き上がった。
銀時は上半身だけ裸。暑いとか言って脱いでいた。下はちゃっかり穿いたまま。
「なんかいいな」
「何が?」
視線を向けると、隣でにやにやしながら、膝に頬杖を付いている銀時と目があった。
「その格好」
「服着てないだけじゃん。ってか寒い」
着物に手を伸ばす。
するといきなり、背後から胸を触られ、そのまま抱き締められた。
「ひゃっ!?」
「結局脱ぐんだから、裸の方が楽じゃね?」
「そういう問題!?」
確かに、最終的に脱ぐから裸の方が楽だけど…。
背後から私を抱き締めながら、銀時は陽気に話す。すっかり目が覚めた様子。私を抱き締めてくれている銀時の体温が暖かくて、私は寄り掛かった。
行為をするなら裸の方が楽。だけど、脱ぐまでの過程も、私は楽しみたいし、さすがに冬は寒い。
「それに、またこれ着んの?」
私の代わりに、銀時が手にした私の着物。それを見て、項垂れた。
所々、二人の愛液がついて乾いている箇所がある着物を、また着たいとは思わない。
「いい…でも寒い」
私の着物を何処かに投げ捨てた。捨てんなよ…と思いながらも、もう何も言わない。
「なら俺の着てろ」
裸同然は寒い。すると銀時は、自分の上着を手にし、私に寄越してくれた。
「寒くないの?」
受け取りながら問い掛けるが、銀時は楽しげに答えた。
「どーせまた脱ぐんだし」
「なにそれ…」
手を離したので、私は銀時から受け取った甚兵衛を羽織る。銀時の匂いに、つい、胸が高なる。抱き締められているみたいで、何だか安心する。
脱ぐってことは、まだヤル気?
どんなけ元気なんだよ…。白夜叉の体力に、付いていけるか!
「その格好もやべぇーな」
自分の上着を着ている彼女に興奮したのか、銀時は終始にやにやしている。
銀時に振り向き、私は呆れた表情を向けた。
普通の着物を着ていても、「秘め終わり」だの「うなじがエロい」だのと言われ発情。
裸でも発情し、彼氏の上着を羽織っても発情。
「何着ても、結局発情するんじゃん」
「桜にしか発情しねぇーよ」
「当たり前でしょ!」
軽く睨み付けた。
他の女に発情したら、承知しないからね。ってか許さないし。
「っつーか、今何時?」
「ん?十一時五十分位」
「まだ新年明けてねぇーな」
「あと少し。ねぇ、年明けたら初詣行きたい」
「え?さみぃーからやだ」
「上半身裸の奴が何言ってんの?」
説得力ない。
さみぃーからやだって…。
自分の格好見てから言えよ。
銀時もそう思ったのか、罰が悪そうに、私から視線を逸らした。
「昼間なら…いいけどよぉ」
「ホント!?昼間でいいよ!神楽ちゃん達も誘って行こっ!」