企画(ぎんたま)

□ハロウィン企画
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case3.TOUSHIROU


朝の静けさを蹴り破るように聞こえてきた足音。
その足音は確実に、自室で仕事をしている自分に向かって来ている。
何事かと後ろを振り返ると、勢い良く障子が開けられた。それと同時に、明るい声も聞こえてくる。

「とりっくおあとりーと!」

声の主を見て、土方は銜えていた煙草を落とした。
桜の姿を見て、何も思わないわけがない。
いきなり訳の解らない言葉を聞かされ、挙げ句の果てには仮装までして…。
状況を飲み込めていない。
たった一言しか、言葉が出てこない。

「……何…?」

やっと出た言葉さえ、簡要で短すぎる。
でも、十分に伝わるはずだ。
桜にもちゃんと伝わっており、少々不機嫌になりながら説明を始める。

「今日ハロウィンだよ?お菓子もらわなくちゃ」

「あぁー…そうだったっか?」

「そうなの!ってわけで、お菓子くれないとぶっ殺すぞ?」

「あれ?なんか台詞違うんじゃねぇか?俺の時だけ違うんじゃねぇか?」

いくら可愛く言ったって、物騒な言葉に代わりはない。
桜のしている仮装は魔女。
とんがり帽子を被り、マントを付けて、手には杖。
その杖に付いている赤いものは、この際見なかったことにしよう。

「違わないよぉ。お菓子くれないんじゃぁ仕方ないなぁー…」

「おい…お前まさか…」

嫌な予感がした。
桜の手には血の付いた杖。
他の隊士も同じ目にあっているに違いない。
杖を振り翳し、にやりと笑う。

「総悟ぉー!!」

「あいよ」

まるで、桜に呼ばれるのを待っていたかのように、何食わぬ顔で沖田が出てきた。
その顔には、何かを企んでいる笑顔が貼り付けにされている。

「覚悟!」

「死にさらせぇ!土方ぁぁ!」

何故か沖田も杖を持っている。
それを見て、土方は確信した。

「お前らグルかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

勢い良く振り下ろし、何とか逃げる。

「大人しくお菓子くれればいいのにぃ」

ただ単に、土方で遊びたかったハロウィンだった…。
でも自分の手は汚したくない桜であった。





次→沖田。


執筆完了【2007/10/30】
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