よろず夢置き場
□ファンキーモンキーベイビィ+破天荒な現役編+
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「ウチらの学校に喧嘩売るなんて…いい度胸してるね…」
睨み合い。
手には武器。
早く喧嘩がしたくて、逸る気持ちを隠せない舎弟達。
互いに、トップと言う誇りを胸に掲げる。
鉄パイプを肩に担ぎ、相手のトップに不適な笑みを送る。
ウチらに…。
黒曜中が誇る不良集団に、敵う奴等なんているのだろうか…。
校庭に並ぶ不良の数は、述べ二百人。
みんな、逸る気持ちを抑え切れず、一歩一歩と足を踏み出す。
殴り込みに来た他校を、潰す程の強さはある。
「女だからって、手加減なんてしねぇからな」
「手加減?んなもん、こっちがしなくちゃ、ウチらが圧勝しちまうじゃねぇーか」
「こ、このアマァー!!てめぇーら行けぇぇぇぇぇ!!!!」
「潰せぇぇぇぇぇー!!!!!」
トップの掛け声と共に、不良の抗争の始まり。
上を、決めようじゃねぇか。どっちが最強か。
白黒はっきりつけなくちゃなぁー!!
後に、この戦いは歴史に刻まれていく―…。
ファンキーモンキーベイビィ
-破天荒な現役編-
教室に響く盛大な溜息を聞いて、私は小さくなった体を余計縮こめた。
「何が歴史に残る戦いですか…。くだらない不良の歴史に残っただけですよ」
「だって向こうが…」
「向こうがじゃないです。だからと言って、舎弟を連れて喧嘩を買う事はないでしょうと、僕は言っているんです…。全く…」
「むっくん強いんだから、喧嘩に参加すれば良かったのに…」
「そのむっくんって呼び方辞めて下さいと、何度言えば解るんですか?」
目の前にいるのは、最近転校して来たばかりの六道骸のむっくん。
生徒会長が訳の解らない事に巻き込まれたかなんか知らないけど、急にいなくなっちゃって、むっくんに何があったか詳しく知らないけど、むっくんが生徒会長に就任したのだ。
堅苦しいけど、むっくんは喧嘩がめちゃくちゃ強くて、不良であるあたし達の話を、少しは解ってくれる。っていうか、お腹空いたなぁ…。
「むっくんはむっくんだもん」
「もういいです…。あなたにそんな事を言った僕が馬鹿でした…」
何度目か解らない溜息をついて、むっくんはあたしへの説教を諦めた。
あたしに説教なんかしたって意味がないと言う事を、今更ながらに理解したご様子。
ってか、説教されて更正する位なら、不良のトップなんてやってないよ。
にしても…。
昼食わないで喧嘩したから腹減ったなぁ…。校庭で延びてる奴等はお昼を食って来たのだろうか…。
そんな事を考えていたら、むっくんに呼び掛けられた。
「桜子さん」
返事をしようと、視線を上げた直後に、あたしのお腹は我慢の限界を訴える。
ぐぎゅーぐるぐるぎゅーぐ
「あっ…えへッ」
わざとらしく可愛く笑って見せるが、むっくんには無意味。
何の効果もないし、何の反応もない。ただ、溜息を返されるだけ。
確実に聞こえてるよ!!
呆れた表情が、なんっかもう哀れみの目になってるよ!!
「全く…あなたって人は…」
「お昼食べ損ねたんだから、仕方ないじゃん!!整理現象だよ!!」
「漢字が違いますよ」
「あれ?整理減少だっけ?」
「訳が解らないですよ…」
「もういいや」
まるごと投げ出した。
あたしに漢字なんて解るか!
「丸投げなんて最悪ですね」
「不良ですから」
人生、諦めが肝心だからね。
誰が言ったか解らないけど、そんな格言あったよね。……格言か解らないけど。
お昼休みに、屋上で舎弟に買わせた…っていうか、舎弟が勝手に買って来てくれたパンを食べようとしたら、校庭からデストロイな呼び出しが掛かってしまったのだ。
「神崎桜子ー!!出てこぉーい!!」
「んあ?」
パンをかじろうとした矢先に、ウチのじゃない不良の声が響いた。
ウチの奴等なら、あたしの事を呼び捨てにはしない。それは、三年の先輩でも例外じゃない。
ちなみにあたしは、今二年。
呼び出しの声に、一番に騒ぎ始めたのはあたしじゃなくて、舎弟達だった。
屋上の柵から、落ちるんじゃないの?と言う程に身を乗り出して、殴り込みに来た奴等にガンを送っている。
お願いだから落ちないでね…。
あたしも舎弟に続き、未だに食べられないパンを片手に、不良達を見てみる。
「あいつッ!!トップを呼び捨てとはいい度胸してますね!!」
「トップ!!俺等の方が格好良い率では勝ってますよ!!」
「は?」
っていうか、ガン送ってたんじゃないのかよ…。
格好良い率って、おめぇーの基準で決めんなよ…。そんなの見てどーすんだよ。喧嘩に関係ないじゃん。
このパン…いつ食べられるんだろう…。この様子じゃぁ、当分食べられそうにない。
あたし達が、屋上で馬鹿騒ぎをしていたら、向こうがあたし達に気付いて、再び叫んだ。
「おい神崎!!負けんのが怖いのか…?早く勝負しろ!!」
「めんどくさい…」
そう呟いたあたしの声なんて、興奮している舎弟達に聞こえる訳がない。