よろず夢置き場
□DEATH BALLADE〜死神が歌う愛の詩〜
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遠くに、死神が見えた気がした。
DEATH BALLADE〜死神が歌う愛の詩〜
「なんで出ないんだ!」
苛立ちを隠せず、沢田は通信機を机に思い切り投げ付けた。
何度も何度も、繰り返し呼び掛けても繋がらない。
「十代目…落ち着いて下さい…」
冷静な獄寺が、沢田を宥めるが、そんな事は意味を成さない。
心配で、他の仕事なんて手に着かない程に、ツナは動揺している。
いつもは情けない姿を見て叱咤するリボーンだが、ヤバイ状況だと理解しているから、苛立っている沢田に何も言わずに、ただ安否を心配するばかり。
おとなげない沢田の行動の意味も、リボーンは理解しているから、敢えて制止はしない。
「落ち着いてられる訳ないだろ!!桜子の身に何かあったら…俺…」
怯えているようなツナに、獄寺は掛ける言葉を失ってしまった。
自分のせいでもあるし、ツナが慌てる理由も理解している。自分の事の様に思えて、掛ける言葉が浮かばないのだ。
勿論、危険だと解っていた。
だけど、桜子は周りの意見を無視して、自分が行くと告げて、勝手に行ってしまった。
あの時、もっとちゃんと止めていれば…。
もっとちゃんと、引き止めていれば…。
こんな事にはならなかったのに…ッ!
悔しさを隠せないツナに、ファミリー達は為す術を見失い、戸惑っていた。
携帯に電話をしても出ない。念の為と渡した通信にさえも、応答はなくて、ツナはどうしたらいいのか解らずに、オロオロと怯えるばかり。
「殺される…」
ただじゃ済まない。
こんな事になって、あの人が黙っている訳がない。きっと、恐ろしい事になるに違いない。
もし、もし桜子に万が一の事があったなら、ツナはただじゃ済まないだろう。
ツナが恐怖に怯えている最中、下の階では部下が慌ただしく動いていた。
どうやら、桜子が見付かった様子。早く十代目に伝えろ!との命令に、山本が勢い良く扉を開けて、慌てて入って来た。
「ツナ!!桜子が見付かったぞ」
見付かったと解り、ツナは安堵し、胸を撫で下ろした。
このまま見付からなかったらどうしよう…と、思っていた。けれど、見付かって良かった。
しかし、ツナには一つだけ気になる事があった。
「桜子は!?桜子は無事なの!?」
怪我の有無。
それだけが気になって仕方ない。怪我をしているとあらば、絶対に殺される。確実に、自分はあの世行きだ。
「いや…それが…」
口ごもる山本に、ツナは嫌な予感と寒気を覚えた。
入口にいる山本を押し退けて、急いで下の階へ続く階段を駆け降りる。
下の階では、部下達が恐怖に怯えていた。
駆け降りている途中、ツナは一番見たくない光景を目の当たりにしてしまった。
「あっ…」
目を見開いて驚くツナ。
(ヤバイ…ッ!!)
咄嗟にツナはそう思い、今すぐ此処から逃げたい衝動に駆られた。
しかし、今此処で逃げたら、居合わせている部下に示しが付かなくなる。
それに、悪いのは全て自分だ。無理矢理任務に行く桜子を、止められなかった自分の責任だ。自分は、ボンゴレの十代目ボス。自分の失態は、自分で処理するしかない。
「ひ、雲雀さん…」
呼ばれて、桜子を抱き抱えていた雲雀は振り向いた。
心なしか不機嫌に見える表情は、決して気のせいなんかじゃない。
抱き抱えている桜子に視線を向けると、夥しい量の血に包まれていた。肩で呼吸をして、辛そうな桜子に、ツナは罪悪感を覚えた。
それと同時に体が動き、ツナは桜子に駆け寄る。
「桜子!!」
桜子に声を掛けても、返事は帰っては来ない。今は、話せる状況ではない。
話せない桜子の代わりに、雲雀が口を開いた。
「微かに息をしてる。お腹と腕。足もやられてる」
一刻も早く治療をしなければ、桜子は助からない。
ボンゴレに仕える、最新技術を持っている治療班に頼むしか、桜子が助かる道はない。
「は、早く治療を…」
「治療班は部屋に待機させてある」
雲雀が、桜子を死なせる訳がない。桜子に想いを寄せている雲雀が、みすみすと桜子を死なせるはずがない。
雲雀は桜子に惚れている。
だから、桜子を止められませんでした。なんて理由で亡くしたとあれば、沢田はきっと復讐と称して殺されているだろう。いや、真っ先に咬み殺されるのは、桜子に傷を負わせたファミリーだ。
桜子以外には興味なんてない。沢田を、今すぐ殺していいと言われれば、すぐに実行に移せるのだから、きっと、沢田を殺るなんてたやすい事だろう。
「桜子!!桜子!!しっかりして!!桜子!!」
「助かるよ。死なせやしないから」
死なせやしない。
絶対に助けてみせるから。
この子だけは、絶対に死なせはしない。
まだ、らしくなく想いも告げていないのだから…。
だから、絶対に死なせはしない。
「沢田綱吉…後で覚えておいてね…」
「ひぃっ!!」
どうして桜子が傷付かなくてはならなかったのか…。
どうして、危険と解っていた任務に桜子を行かせたのか…。
じっくり、聞く必要がありそうだね―…。