金銀花

□それよりも愛が勝ってる。
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おまけ


「屯所内の禁煙についてだけど、あれもう解除でいいや」

「えっ?もう?」

口を開いたのは近藤。隣で、土方は冷静を装っている。
桜子と結ばれた夕方、沖田が緊急会議を開くから、集まれとの放送があり、土方や近藤も同席し、会議を始めた。そしていきなりの禁煙解禁。


この間決まったばっかなんですけど…?


土方からしたら嬉しい議案。
だけど、他の隊士が納得する訳無い。皆、土方の喫煙に困っていたからこそ賛成したのに、もう解除なんて有り得ない。賛成する訳が無い。

「ちょっ!沖田さん!どうしたんッスか!!俺は反対です!」

「自分もです!!」

「そうだそうだ」と白熱する会議の中、土方はにやけ顔を抑えるのに必死。禁煙解禁の事と、結ばれたばかりの桜子と過ごす夜の事を考えているからだ。
どうしようか。何をしようか。どう攻めようか。寧ろ、土方からしたら嬉しい議案だが、今の土方の頭の中には桜子の事しかない。

「どうしても何もねぇ。土方を苦しめる為だけの禁煙が、逆に仇になりやがった」

「は?どう意味ですか…?」

「土方さん」

「あぁ?」

幸せな思考と途中で邪魔が入り、土方は不機嫌に返事を返す。
話を全く聞いていなかったから、どうして名前を呼ばれたのか解らない。

「俺達のアイドルに、手ぇ出しやしたね…」

「はぁぁ?俺達のアイドルって…」

心当たりなんて一人しかいない。屯所内の女なんて、女中の桜子しかいないし、隊士達に人気があるのも知っていた。

「桜子にキスを迫り、ものにしやしたね」

「何で知ってんだ!?あ、いや…」

どうして沖田が知っている!?
先程の展開を、何故こいつが知ってんだぁぁぁぁ!!

隊士達のぎらついた目は、沖田ではなくて土方に向けられた。
喫煙よりも許しがたい自体に、目が殺気立っている。

つい認めてしまい、土方は慌てながら弁解をしようとする。
だけど、謝るような事なんて何もしていない。好きな女に好きだと告げただけ。順序は違えども、それを桜子も受け入れてくれた。だから、謝る道理などない。

「土方さん認めやしたね」

「だからどうした。好きな女に告白して何が悪い。別に俺は禁煙続行でも構わねぇぜ?俺には、桜子がいるしな」

勝ち誇った笑みを浮かべ、隊士達を威圧する。副長の正論に、言葉を飲み込む隊士達。

強気に出たは良いが、内心気が気じゃない。素直に謝るなんてしたくない。寧ろしなくていい事。だけど、禁煙解禁は絶対にして欲しい。でも、桜子との事を謝ってまでして欲しくはないし、選ぶなら桜子に決まっている。

「禁煙は解禁でさぁ。その代わり、屯所内キス禁止。これ侵した物は、即切腹でさぁ」

「えっ!?ちょっと待て!!それは勘弁してくれ!!それだけは辞めてくれぇぇぇ!!」

「煙草吸えるんだからいいじゃねぇか。それ、いいっすね!」

「そうだそうだぁ!!」

「土方さん以外賛成。よってこの議題は可決されやした」

「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!お願いだから勘弁してくれ!!それだけは勘弁してくれ!!」

キス禁止とか、それこそ気が可笑しくなっちまう。抱き締められるのにキス出来ないとか、本当に気が可笑しくなっちまう!

しかし、そんな土方とは正反対に、隊士達は、恨めしく土方を睨んでいる。憂さ晴らしが出来たからか、清々しい表情の者までいる。

「有意義な会議だったなぁ」


何処がだよ!!
ただの腹癒せじゃねぇーか!!


可決された以上、皆の腹の虫が収まるのを待つしかない。
そのうち「そんな事決めたっけ?」となる流れになるのを待つしかない。

うなだれて、落ち込む土方の肩を軽く叩く近藤。

「近藤さん…」

味方は近藤だけ。
だけど、地獄に落とされる。

「お前だけ幸せになるのは許せないから、俺がお妙さんとキス出来るまで待ってろよな!」

「一生無理じゃねぇぇぇぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「ひどっ!!」

けど、数日後にはキス禁止も解除となっていた。理由は、隊士じゃない桜子からなら、土方へキスが出来る。そんな美味しい展開、絶対に許せないし、羨ましいから。その次は、ハグ禁止の議案が可決されたとかされないとか。
兎に角、沖田は土方を虐めたいだけ。他に理由なんて無い。
いつまでやるのかと、呆れる桜子。まぁ、でも虐められている土方を見るのは好きだから、止める気にはなれない。
ごめんね。と思いながらも、土方と幸せな毎日を過ごす桜子。
キスもハグも、禁止になったら桜子からすればいい話。禁止事項よりも、愛が勝ってる日々。
幸せな毎日には、禁止事項なんて無意味なんだから…。





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