Little QUEEN〜小さなお姫様〜

□家族
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「花月…」

花月の言葉に反応し、観月が変な笑いと共に言葉を発した。

「駄目ですよ…彼女だったら大切にしないと…」

「だから違いますって…」

このからかいに終止符を打ったのは、他ならぬ花月の一言だった。
花月は裕兄に抱き付いたまま、見上げる様にして見ている。

「ねぇ裕兄ちゃん…コートに行かなくていいの?」

花月の発言にその場にいた者達が、「えーっ!?」と叫んでいる。

「裕兄ちゃんと言う事は…妹?」

「………」

「悔しい…こんな可愛い妹…」

「妹居たんだ…」

ルドルフ一行が皆、違う事を口走りながら、花月に視線を注いでいる。
花月は何がなんだか解らないと言った感じで、きょとんとしている。

「だから違いますって言ってるじゃないですか…こいつは俺の妹です」

額に手を当てて、ため息混じりにこう言った。
別に隠していた訳じゃないし、言う事程大切な事じゃないしと同じ部活の人には言っていなかった。
自分から聞かれてもいないのに「妹がいます」なんて、シスコンだと思われてしまう。
しかしこうなるなら言っとけば良かったと激しく後悔する裕太であった。
花月は紹介されたのなら挨拶しなければと、笑顔で話し掛けた。

「初めまして!妹の花月です!!」

深々とお辞儀をし、皆にニコッと笑い掛けた。

(かっ…!可愛い!!)

無意識のうちにした笑顔でルドルフの選手達を虜にしてしまった。
そんな事知らずに、花月はテニスコートまで皆を案内する。
後ろでは花月の話で持ちきりだった。
テニスコートに付いて早々花月は英二に抱き締められた。

「花月ちゃん!!何もされなかった??無事だった??」

英二は中々戻って来ない花月を余程心配したのか、抱き締めたまま離そうとしなかった。
周りではやはり罵声が飛んでいた。やっぱり花月はおとなしく英二に抱かれている。
英二に抱かれたまま、花月は気になった事を問い掛けた。

「試合…始めなくていいんですか?」

確かに花月の言う通りだ。ルドルフが来てから悠に30分は経っている。
試合を始めないのは、自分の所為だと全く気付いていない花月なのであった。


今日も数人の男子を魅了してしまった事に気付くのは何年…いや何十年後の事だろう。
今日も青春学園の男子は兄の不二から冷たくて恐い視線を向けられるに違いない。


―おまけ―


兄と弟の会話…。

「やぁ裕太。元気だったかい?」

「おう…」

「此処まで来るのに結構時間が掛かったね」

「花月がいきなり抱き付いてくるからよぉ、先輩達に誤解されたんだよ…」

「…ふーん、花月も久しぶりに会えて嬉しいんだよ。……誤解されたって話してなかったの?」

「あぁ…誰にも聞かれなかったし…(最初の間が気になる!?)」

「まっ、あんだけ可愛かったら一目には曝したくは無いよね…」

「兄貴と一緒にするなよな…」

「あれ違うの?まぁいいや…裕太に会えてあんなに喜ぶんだからたまには帰って来なよ」

「そうする…」

「今日は?」

「……帰るよ」





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