Little QUEEN〜小さなお姫様〜
□家族
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「花月ちゃん!!こんにちわ!」
三人くらいで花月に挨拶をする。
三人とも中三とは思えない程の美人で、さすがの花月も最初は驚いたのだが、今ではすっかり慣れつつあった。
「こんにちわ!先輩」
無邪気な笑顔で挨拶を返すと、一人の先輩が花月に抱き付いてきた。
「もう!!花月ちゃん可愛すぎよ!!不二君、この子頂戴!!」
冗談かと思いきや、瞳がキラキラしていて真剣そのもの。
不二はにこっと笑ってから花月を自分の方へと持ってきた。
「花月は誰にもあげないよ。それと花月にあまり抱き付かないでね…嫌がってるみたいだし…」
「だって花月ちゃん、抱き心地がさいっこうにいいんだもの!!」
明らかに先輩達は興奮している。
そして、不二のクラスの男子達も花月が来ると目の色を変える始末。
学園一の美女が自分のクラスに来たのだから、お近付きになりたいと思うのだが、兄が恐くて近寄れない。
不二は辛うじて女子だけしか花月に近付けさせなかった。男なんてテニス部レギュラー陣だけで十分だ。
本当はレギュラー陣も嫌だけど。
気が付けば、花月は先程の女の先輩と楽しく話をしていた。
「……そーいえば越前は何でいつも付いてくるんだい?」
笑顔で質問するがそれがまた違う意味で恐い。
花月に触るなオーラが充満している。
「別に…ただ一人で行かせると、此処まで来るのさえ迷いますから…」
黒いオーラに負けじと言い返す。
一度一人で三年の教室を目指したが、花月は超が付く程の方向音痴。辿り着けなかったらしい。
それから同じクラスであるリョーマが付き添いで来てくれているのだ。
「確かに迷いそうだね…でも花月にはまだ手を出さないでね」
笑顔でニコッとしながら黒いオーラを放っている。どうすれば同じ親からこんな恐い兄と、学園一の美人な妹が出来るのだろうか…。
二人とも整った顔をしているが、性格は全く違うらしい。
チャイムがなってしまい、リョーマに急かされ、周兄に手を振るが、先輩達の方が大きく手を振っている。
心の中で「さよなら、マイエンジェル」と呟いた人がいる事に花月は最後まで気付かないであろう。
* * *
放課後の部活で花月は嬉しい知らせを受けた。
もう一人の兄の裕兄がいる学校、ルドルフとの練習試合があるというのだ。
場所は青春学園。
花月はマネージャーなので、部活へは来なくてはならない。
しかし次の部活が楽しみで仕方なかった。
「周兄ちゃん!明日裕兄ちゃんに会えるんだね」
花月が部活中で休憩している周兄の服を引っ張りながら、無邪気な笑顔で言った。
不二も久しぶりに裕太に会える喜びからか、微かに笑顔になった。
「そうだね。最近帰って来てないからね。元気でやってるかなぁ…」
「裕兄ちゃんなら大丈夫だよ」
満面の笑みで言う花月を気にしながらも、練習に励んでいるレギュラー達。
花月の頭を軽く撫でると、ベンチから立ち上がりコートへと戻っていった。
不二が居なくなった隙を付いて、英二とリョーマが花月の元へ行こうとすると、花月はどこかに用があるのか、どこかへ行ってしまった。
「あっ…花月(ちゃん)」
二人して花月の背中を見つめ、落胆の息をついた。
がっくりしながらコートへ戻ると、不二がリョーマに冷たい視線を向けていた。
まだ手を出さないでね、と目で訴えている。まだと言う事は、手を出してもいいと言う意味なのだが、この時のリョーマにはショックのあまり考え付かなかった。
* * *
花月は、裕兄ちゃんが来るからと、朝から浮かれモードに入っていた。
そして放課後の部活で今か今かと待ちわびている。
(裕兄ちゃんまだかなぁ?)
ベンチに座りながら、そんな事を考えていると、顧問であるスミレ先生が口を開いた。
「そろそろ来る頃じゃな…花月、迎えにいってくれんかのぅ?」
先生に言われて、ついつい元気良く「はい!」と答えた。
正門まで走っていくと、もうルドルフ一行は来ていた。
その中に念願の裕兄を発見。嬉しさのあまり、裕兄の元へ走っていった。
裕兄は仲間と楽しそう(?)に話をしていて、しばらく見ていないから、元気な姿を見て安心した。
花月は裕兄の前まで来ると裕太に飛び付いた。
それに驚いて、裕太は慌てている様子でまわりをきょろきょろしている。
「花月?いきなり飛び付くなよ…」
その言葉にいち早く反応したのは、データマンの観月だった。
「おや?その慌てようからして、この子は裕太君の彼女ですか…」
ほぼ断言に近い口調。
裕太は慌てながらも、抱き付いてきた花月を抱き留めていた。
「ちっ…違います!!彼女じゃありません!!」
観月の言葉に一斉に裕太へとからかいの言葉が集まった。
「可愛い子だぁね。お前も隅には置けないんだぁね」
相変わらずのアヒル口調で、つんつんと裕太の肩をつっ突いている。
「隠さなくてもいいじゃん。でもこんな可愛い彼女だったら見せたくないよなぁー」
「赤澤部長まで…だから違いますって!」
裕太は必死で違うと言い続けるも、全く信じてもらえない。
先輩達は裕太の否定など聞こうともしていない。
「花月も早く離れろ!」
「嫌だ!久しぶりに会えたから嬉しいの!」
花月はそう言うと先程より強く裕太に抱き付いた。