人地魔天妖界録
□序 章 シンクロニシティ(始動)
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「――あー!もう!ちくしょう!何で俺はいつもいつもいつも、こうなんだよ!」
馬鹿みたいな叫び声を上げつつ香美椰慎平(かみなしんぺい)は物凄い勢いで、深夜の裏路地を走り抜けながらチラリと背後を振り返って見る。
…人は居ない…
「くそ!いつまでもしつこいぞ!」
人は居ない背後に文句を言いつつ、薄汚れたごみバケツを蹴飛ばし、香美椰は走り続ける。
もうすぐ夏休みという、テンションと友人の驕りと言う魔性の言葉でカラオケ、メシ、ボーリングと遊んだまでは良かったし、楽しかった…
けど、アイツがわざわざ、あんな所に俺を連れていくから…
ひゅ〜〜〜
「!」
後ろ髪に生ぬるい風が走り路地裏から道路に飛び出ると
ビーーー!!
香美椰はクラクション全開の白い軽自動車の目の前にこんにちはをして…
「南無三!」
ガッ!
止まらずに走り抜けたので持っていた鞄にライトがかする程度と運転手の怒りの罵声だけで事が済んだあと…
寝ている酔っぱらいや浮浪者しか居ない、駅近くの円上公園の中で…
「〜〜っとに、お前等…いい加減にしろよな…」
香魅椰は人の居ない背後に疲れきった声を投げ掛ける
『お前が悪い…なぜ大人しく呪(しゅ)を受けない?』
振り向くとやたら長い黒のマフラーを目の部分だけ開き頭から首まで巻き、グレーのズボンにハイネックの黒いTシャツと季節感無視の者がいる。
「だから…何度も言ってるだろ…俺は呪われてるくらい不幸だって!」
『それは貴様の業だろう、私が言って居るのは、貴様の行いに対しての呪だ』
「俺が何したってんだよ…」
『私の神社で狼藉を働いたろう。』
「狼藉って、ただ入っただけだろ…」
説明が必要だろう、さっきから話してる者は人間じゃ無い……妖怪だ…妖怪みたいな人間じゃなく本物妖怪だ。
『何より人間風情が…私の姿を見て居る事が…腹立たしい!』
「…見えるのは体質で見たいわけじゃないし、美…」
『黙れ!私は大妖怪、大天狗の末裔だぞ!』