短編1

□ゲーム
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本気になったら、負け。




心の何処かに居座るこの気持ちは、
恋愛感情なんかじゃない。

ただの、暇潰し……?



それとも……
悪魔とのゲーム?










「……帰んのかよ?」

起こさない様に服を身に着けた私に、まだ半分くらいは眠ってるみたいな声で妖一が呟いた。


「時間だから。
明日のお昼まで部屋は延長したから、ゆっくりお休みなさい」

身仕度を整えた私は妖一の耳元に囁いて、頬にキスをあげる。


妖一は私に腕を伸ばすとまるで甘えるかの様に私を抱き締めてくる。



その姿は、天然のホストかジゴロか。

……やっぱり貴方は悪魔だわ。


仄暗い部屋の中で、シーツの上に乱れるサラサラの金髪。

細い割にしっかりとした筋肉に包まれた、意外と逞しい身体。

鋭い視線を投げ掛ける、見詰めたら魅入られてしまいそうな碧い瞳……。










ある企業の役職に就いている私の夫。

その脅迫ネタを握っている男がいるらしい……。


噂を掴んだ私は、誰にも気付かれない様に慎重に調査した。



行き着いたのは、とても高校生とは思えないこの悪魔だった。










「…何が望み?お金?」
部活帰りの彼の前に姿を見せた私は微笑みながら聞いた。

悪魔は笑ってこう答えた。

「オレが欲しいのはテメェだ、名無娘」



さすがに予想の範囲外だったその言葉に、内心驚いてるうちに唇を奪われていた。



乱暴なのに、優しくて甘い…………。
それは、まさに悪魔の媚薬。




一瞬だけ流されそうになった気持ちを、彼の唇に噛み付く事で抑えた。


ニヤリと笑って唇の血を舐める姿は、最早人間にすら思えない。

妖艶な悪魔………。






脅迫ネタをばらさない代りに、オレと付き合え。

悪魔の要求から始まった、私達の関係………。



この悪魔を手懐けたら、面白いかもしれない。



思い付いた暇潰し。





元々、女好きで素行の悪すぎる夫を庇う気なんか私には更々ない。


私達の結婚だって、
取引の為に、
肩書きの為に、
情報を仕入れる為に、
数多のお見合い写真からカードを選ぶ様に一枚引いただけ。


お互いに、愛情なんかカケラもない。












私は渋々と要求に従う貞淑な妻を演じながら、心の中では楽しんでいた。







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