TOA/シンアリ







「……………何」







不機嫌な声が響く、

視線を動かず頬杖をついたまま、呟くようにシンクが口を開く








「………………」







アリエッタは何も言わず、シンクをじっと見つめたまま

呼吸をするのも苦しいような殺気だった空気を、ピリピリと全身で感じる







「ボクが今、不機嫌なの 見てわかんない?」

「…………ちがう」

「は?」







ぬいぐるみをぎゅうっと強く抱き寄せて、絞り出すように小さな声で

こわくない、こわくはない

なかない、なかない!









「シンク……本当は、寂しいだけ………アリエッタには、わかる………もん……」








アンタがボクの何を知ってる?

これのどこを見て寂しいって?

他人にいちいち首突っ込むなよ






並ぶ罵声の言葉の品々を、ぶつけずに飲み込んだ

静寂。









「………………お節介」

「ア、アリエッタはシンクより、お姉さん……だもん」

「中味はボクより下なクセに」

「ちがうもん」

「ちがわない」

「シンクのいじわる」







うる、と今にも零れそうな涙を浮かべるアリエッタを一瞥し、わざとらしい大きなため息を吐いてシンクは ん、と向かいの椅子を指差した











「とりあえず座れば?」

「…………シンク!」








ぱあっと輝く幼さの残る表情に、鬱陶しさを感じながらもティーカップに紅茶を注いでやる(角砂糖はいつも通り二つ)













(ありがとう、なんて言ってやんないんだからね)







向かいの席で鬱陶しく笑うアンタを、待ってたなんて絶対言ってやんない






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