TOD2

infight4
5ページ/6ページ


























2回のノックに、ハロルドは目を覚ました

嗚呼、眠っていたのか と起き上がるとまず首が痛かった

机に頬をつけたまま眠ってしまったのだから当然なのだが

体を伸ばして欠伸をし、入れば?とだけ言う

コーヒーでも飲もうか、とコップ代わりのビーカーに手を伸ばしながら開いたドアを見つめ、硬直した












「失礼する」






ジューダスはそれだけ言うとドアを閉めて、何も言わずにハロルドの近くの椅子に座った


ハロルドは彼の顔からすかさず目を反らしてコーヒーを淹れることに集中することにした

だけど視線はなくとも感じる彼の存在に気配に、嫌でも自分の体は反応してかたかたと指が震える

麻薬中毒者でもあるまいに、と自身を毒づいているとコーヒーを淹れたビーカーが手からすべりおちた






「っつ!」







彼女の手の甲に沸騰したばかりの湯がかかる、がちゃり と破片を飛び散らせながらビーカーが床から弾け砕け散った

ジューダスがすかさず立ち上がって、大丈夫かとハロルドに尋ねようとするのを きっと睨みつけて黙らせた

どうしてそんな行動をするのかはよくわからない、どうしてどうしてどうして

前はただ熱いと顔を顰めていれば しょうがないやつだってため息まじりに火傷の介抱をしてくれた

今だってきっとそうなはずなのに、どうして自分はそれを拒否してしまうのだろうか







「ハロル」

「っさいわね、用が無いなら出てきなさいよ」







どうして刺々しい言葉しか、口から出てはくれないのだろうか







ジューダスは口を開いて何か言いかけて、止める

口を閉じてゆっくりと首を振り(それが何を意味しているのかハロルドにはわからなかったが)

立ち上がって部屋から出て行った







ぱたり、とドアが閉まる音がしてはっとする







「ジューダス」






顔を上げても、そこには誰もいない

愛想をつかされてしまったのか、それもそうだろう

他人の好意を毒舌で返したのだから当然だ

ハロルドは立ち上がってドアの傍まで駆け寄った





少し躊躇って、あける






でもそこには誰もいなかった

少しだけしていた淡い期待が、脆く崩れ落ちた







次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ