TOE

闇夜に踊る、揺れるスカート 僕の心
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妖精かと思った















つい、研究資料を見るのに没頭していたキールはもう夜更けだという事に気づいた

文字を読んだ後ですぐには眠れず、宿の外へと出た

びゅう、と通る風は凍てつくように冷たい

これでは余計眠れないかもしれない、いや帰ってからホットココアでも飲めばいいだろう

二酸化炭素の充満した部屋にいたせいか、空気がおいしく感じる










加えて夜中の、街灯のあまりついていない ひっそりとした空気が余計に心地よい
















その時目に入ったのが、妖精だった

いや、妖精のような 人間だが











少し開けた広場の中心で、くるりくるりと回転をしてふわりふわりと軽やかに飛ぶ

その瞳にはただ漆黒の闇を映しつつ、でもどこか儚い影があった

月の光に照らされて、きらきらと光るその姿














いつまでも、見続けていたいくらい 綺麗だった
















「あ」












その妖精が、こちらに気づいた

はっとした自分が まずい、と察知してその場を去ろうとしたのも遅い












「おーいキールー!」











さっきまでの大人びた憂いをおびた表情はどこへやら

にこにことご機嫌な笑みを浮かべてメルディが走ってくる

キールは観念してため息を吐く、メルディはキールの腕にじゃれ付いた














「キールも眠れなかったか?」

「僕はただ外の空気を吸いに来ただけだ」

「そっか〜」










偶然出会った、ただそれだけなのに

蕾が開花したかのようにふわりと彼女は笑う、幸せそうに










「おい、お前上着を羽織ってこなかったのか?」

「ん〜?ああ、セレスティア元々寒い所、メルディこれくらいへっちゃら!」

「あのなあ……」









マントを脱いでメルディに押し付けて、キールは眉間に皺を寄せた

メルディは不思議そうに首をかしげる








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