TOD2
□はじけたキモチ
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「無駄だと思うか?」
「何が?」
「どうせ消える身である僕が、このような行為に走る事が」
「別に?そんな事無いんじゃない?」
「そうか」
そしてまた、重ねようとした唇を顔ごとふいと反らしてハロルドは拒絶した
驚いた様子を微塵も見せない彼にちょっとした苛立ちを感じつつ、あくまでいつもの調子を出すように毒舌に言った
「でも、私にこんな事してどうしたいワケ?アンタには何の利益もないでしょう?」
でも彼は、軽く受け流すかのように ふ と笑うだけだった
「愚問だ」
「は?」
「そんな事聞くな」
そう言った彼の瞳、後悔と迷いで少し揺れていた
今にも泣き出しそうとも言える苦渋の表情で、小さく呟いた
「消えたくないんだ」
嗚呼そうか
キスの嵐に呼吸が薄れていく中でハロルドは納得した
怖いのか、彼は
いつもは冷静を装っているけれど
本当は恐怖で打ち砕かれそうなのか
だからこんなにも、他人と繋がりあう事を望むのか
首元にちくりと走った小さな痛み、彼がキスマークをつけたのだと理解した
消える事に恐怖を感じ、怯え 困惑している彼が痛々しかった
こんな行為をする事でしか、逃れられない苦しみから目を背ける事ができないのかと同情もした
何より、愛しかった
目の前で素直に怯えるその姿が、単純に可愛かった
ふいに顔を背け、自分に背を向けたジューダスが「すまない」と一言だけ呟いた
抗えない現実に、逃れられない恐怖が圧し掛かって
衝動的にその現実から逃避したかった自分の甘さを反省しているようだった
馬鹿ね、小さく呟いてハロルドはそっと後ろからジューダスを抱きしめた
彼の震える背中ごとそっと抱きしめて
どうせ消えてしまう感情なら、無くなってしまう思いならと
自身で絶対に言わぬと封じていた言葉を、ハロルドは放った
「好きよ、ジューダス」
だから、泣かないで
おしまい