TOD2

幸せの定義
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嗚呼、かなわない










あんな屈託無く笑う彼女に

あんな風に幸せを感じる彼女に










自分は何一つ、勝っている点が見当たらなかった










彼の姉より優れた部分を見出すことで優越感に浸ろうとしている自分に嫌悪を感じた

そうやって比較の対象に持ち込んでいる時点で自分は負けているのだ









でも何かが勝っていたいと思う

少しでも優越感に浸りたいと思う









彼と彼女はやっぱり似ていた

何が、とはいえないくらいの『何か』が似ていた

2人をシンクロさせてダブらせた、見間違えさせた








2人の間の何かの絆を感じた気がした

悔しかった









だから彼女より勝っていたいと自分はやけになっていたのか










(馬鹿みたい)








愚かな思考パターンに涙が出そうだ











目の前のイクシフォスラーを一瞥して、ため息

ざくり、と背後で草を踏む音が聞こえて驚いた









「誰?」

「僕だ」








いつもだったら嬉しい

表情には出さないけれど、彼が近くにいてくれる事は嬉しい

それは実験台だからじゃない、どこか落ち着くから










でも今は、苦しい











「整備は終わったのか?」

「さっきね、終わったわ」









だから振り返る事すらできないのか

その顔を見下して、ふふんと高圧的に笑う余裕なんて欠片すらでないのか











「ジューダス」

「何だ」













私は科学者よ、泣く子も黙るハロルド・ベルセリオスよ




たかがこんな事で、くじけていてどうするのよ ねえ














「貴方の『幸せの定義』を教えなさい」

「何だ、それは」

「いいから答えなさい」







なんて余裕がないんだろう

もう少しで彼とはもう一生あえなくなってしまうというのに










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