TOD2
□幸せの定義
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「ねえ、一つ聞いてもいいかしら」
彼と血の繋がっている彼女なら、彼と似たような思考を持っているのだろうか
別段そういうわけがあるはずがない事を、自分の頭脳はよく知っていた
血が繋がっていようと他人は他人である、思考パターンまでもが類似する事は稀でしかない
それでも聞きたかった
彼の姉から
「貴女の『幸せの定義』を聞かせてもらいたいの」
「『幸せの定義』?それは新しい研究か何かなの?」
「個人的に聞きたいだけよ」
ううん、と首を傾げて唸る姿は、どこか彼を彷彿とさせる
顎に手をあてて少し顎を引くその仕草は、彼とシンクロして一瞬見間違えるほどだった
「笑顔、かな」
「笑顔?」
しばらく唸っていた彼女から放たれた言葉に、正直唖然とする
「誰かが笑う事、それがたぶん私の『幸せの定義』って奴だと思う」
「何ソレ、随分安い幸せなのね」
「安いに越したことないと思うけど?幸せなんて、安くて小さい方がお得なのよ」
「……幸せに損得があるわけ?」
どうも、彼女の言葉は自分には理解がし難い
自分はさておき、一般論としては大金を手に入れたり
金を必要とする事が幸せと結びつくはずではないのだろうか
「小さい幸せがたくさんあるほうが、一生幸せに生きていけると思う」
「どうして?でっかい幸せがどかんとあった方が幸せじゃないの?」
いつしか頭脳は機能を止めた
『科学者』ではなく『ハロルド』として、探究心を満たしたくなった