TOD2
□幸せの定義
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「紅茶だけど、よかった?」
「ええ、構わないわ」
ことん、と机に置かれたティーカップから立ち上る湯気を見つめてハロルドはため息を吐いた
嗚呼、柄にもなく緊張してるんだな と少し嫌悪すら感じる
台所で荒いものをしている彼女は、この孤児院を女1人で切り盛りしているという
旦那はエルレインが復活させたバルバトスによって討たれ、死亡
それなのにそんな悲しさを微塵も感じさせずに陽気に笑うのだから面食らう
加えて、彼女はジューダスの姉だ
たぶんそれが緊張の一番の原因だろう
少ししか見たことのない彼の素顔は、きっとこんな風なのだろうか
小さな顔に目はくりくりと大きくて愛らしく、一児の母なのに若々しさを感じる
ず、と紅茶を啜ってまたハロルドはため息を吐いた
天才科学者ハロルド様がこんな女1人にびびってるなんて、と鼻先だけで笑ってみせる
「悪いわね、あの子達 すごく手がかかるでしょ?」
荒いものを終えた彼女が手を拭いて振り返り、自分の向かいに座って思わず動揺してしまう
それを表情や仕草には出さないが、心の中がチリチリと焼けるような思いさえする
「あの子達?」
「カイルとロニ、あの2人は小さい頃から手を焼かれっぱなしで」
「まあ、その分はきっちり返してもらってるから大丈夫よ」
サンプルとらせてもらったりしてね、と心の中で告げる
彼女は不思議そうに瞬きしたが、それならいいのよ と笑う
これが、彼の姉
血の繋がったお姉さん
胸の奥がじくりと痛いのは、なぜだろう