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inferiority complex
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「アリシアの夢を見た後……いつもなぜか、寂しい気持ちになるのに今日はならかった」



「プレセア」

「ジーニアスのおかげ、です ありがとう」






だから泣かないでください、と彼女が少し眉を下げて困った声で言えば言うほど

それに比例してボクの目からは涙がぼろぼろ零れてはとまらなかった









生意気だっていわれるし、ガキんちょだって言われるのもほんとだと思う

知識だけの役に立たないチビだって、思われてるかもしれない









だけどこうやって




ほんの少しでも








無力なボクが、彼女の役に立てる事が嬉しくて

それだけでもボクは、今自分がここにいるという存在理由さえ見出せる

ハーフエルフだと酷い迫害を受け人間もエルフも信じられなくなっていたボクでも








ただ君の隣にいる事が、ボクの生きてる意味だってさえ 思えるんだ思うんだ









「プレセア」

「はい」








「ボクが、プレセアをずっと 守るからね」







ぎゅっと彼女の手を握り締めて言った言葉、噛まずにきちんと最後まで言えた








「はい、私もジーニアスを 守ります」






やっぱり、と思いつついつもの返答に苦笑いを返すけど

その手を握り締めたまま、皆が待つ食卓へと向かう







そのボクよりほんのわずかに小さな手を、

離さないように壊さないようにとそっと優しく握り締めて












おしまい

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