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だいすき 4
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「じゃ、俺さまそろそろ帰ろっかな〜」





ぎしりとベンチを軋ませて立ち上がると、ゼロスはううんと伸びをしてみせた

夜も更けてきた、いくらなんでも朝帰りなんてしたら仲間から非難が集中してしまうだろう

元からよくない評判だが、これ以上下げるわけには一応いかない





素直じゃないしいなは、きっと自分の隣を歩いて帰るなんて事 しないだろう

期待をする事を諦めたゼロスは、横目でちらりとしいなを見ると じゃあ先に帰るから、と歩き始めた







あ、と後ろから小さく洩れた声に、立ち止まる








「帰っちまうのかい?」






背中にぶつけられたしいなの声







「リフィル様に怒られるの、怖いからなあ〜」






わざとその声色に気づかないフリをしておどけてみせた







「そうかい」






ぽつりと小さく呟くしいなの声








『行かないで』って言ってるのを、ひしひしと感じたけど

あえて知らないフリ、その心は









しいなの本音を彼女の口から直接自分にぶつけてほしいから










ゼロスの背中を見つめて、しいなは拳を握った








帰ってしまうのか、胸に少し締め付けられるような圧迫感

寂しいんだ、そう理解するのには容易く時間はかからない








だけどそれを、直接言葉にする事はできない

いつだってそうだったから







ざく、ざくとゆっくりとゼロスの背中が小さくなるのを見つめて

そのままどこか手の届かなくなってしまうんじゃないかと胸騒ぎ

ただの杞憂だと思う、かもしれない だけど







離れないで今だけは傍にいて

1人にしないで1人にしないで

隣にいて手を繋いで ねえ









振り返って、行かないで




ねえ











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