TOS

だいすき 4
2ページ/8ページ







ひっそりとしている夜の街

家の明かりももう、僅かしかないこの深夜








月の光だけがやけに、自分の姿を照らしているような気がしていた









ブランコ、滑り台

公園の遊具の中、錆びた塗料が塗りたくられた老朽しているベンチ








足を進めて、止める









「ゼロス?」








思わぬ先客に、胸が高鳴った










「あれ、しいな?どーしてこんな所にいんのよ?」







俯いていた顔を上げると、その顔は締まりなく緩む

いつもの様子にしいなは何故か落胆したような気落ちしたような感情を覚えた







それが何かは、わからない









「あんたこそ、こんな所で」

「ちょっと夜の遊びをね」

「そんな事だろうと思った」







隣に座るとぎしりとベンチが軋む

隣にいる遠くも近くも無い距離が、昼間の光景をフラッシュバックさせる








「飲んでるのかい?」

「どうしてよ」







しいなは顔を顰めて怪訝そうに鼻を押さえた








「アルコールの臭いがぷんぷんするんだよ」






そこで感じた、小さなわだかまり







現実の年の差を感じたような気がした

自分は子供で彼は大人なのだと、

無理矢理頭にたたきつけられたような気がした








何となく嫌悪








「いや、俺さまは飲んでねーけど、酔っ払ったハニーに絡まれちゃってねえ」

「あ、そ」





ふい、と顔を横に背けてしまう自分が、何て可愛げの無い女なのだろうと心の中で嘆く


しかし相手はその心中を察しているのかいないのか、へらへらとしたいつもの笑みを浮かべているだけ








「ゼロス」

「ん〜?」

「あのさ」

「何よ」

「………」

「……しいな?」

「なんでもない」








どうしたのだろう









わからない









自分の感情が、思考が、

理解と常識とを超えて






自分自身でもわからない








次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ