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だいすき 1
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「俺さまは」

「……めろ」

「俺さまはしいなのことが」






駄目、まだ 駄目








「やめろ、アホ神子!」








今はまだ、駄目









強引に掴まれた手を引き剥がす

立ち上がる

借りたドレスはやっぱりしわくちゃになっていた







田舎者の自分には、お似合いだ






そのまま奴に背を向けると取っ手に手をかける

曇りガラスからは、中の暖かな光しかわからない







「待てよ」






じわ、と胸にあつく





染み渡って









背中のすぐ後ろにあいつがいるってわかった

逃げられない、逃げられない







心臓がどきどきして、動けない







「言わせろよ、しいな」

「嫌だって、言ってるだろ」

「どうしてだよ、俺さまが神子だから?お前がミズホの人間だから?」

「………わかんないんだよ、自分でも」






なぜだか涙が出そうだった

胸の隙間に入り込む突き刺さる言葉が痛い







「好きだ、しいな」






耳元でぼそっと呟かれた





あついあつい、耳があつい





言葉と共に入った奴の吐息が熱くて

自分の体が熱くて解けてしまうんじゃないかって思った

爆発してはじけとんじゃうんかって思った











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