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流れ星に願う
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「しーいなっ」

後ろからがばり、と抱きつかれて しいなは我に返った

「ゼロスかい……?」

いつもならば即座に拳が飛んでくるはずなのに、

されるがまま小さく呟いた彼女に やれやれと肩をすくめてゼロスは彼女から離れた







「眠れねーの?」

「まあね、ちょっとばかし緊張しちゃってさ……」







自分の脳裏を駆け巡る、あの恐怖

解らない言葉、倒れる仲間、自分を庇った頭領







明日は、ヴォルトと契約をする







胸騒ぎがして、眠れたものではなかった

皆がすやすやと眠りにつく中こっそりと寝床を抜け出して外の空気を吸いに出た






「昔は昔でしょ、気にすることねーんじゃないの?」

「わかってるよ、わかってるけどさ………」








それでも、体が震える

体中が、恐怖におびえる







過去の恐怖を容易く打ち消せるものではないと、ゼロス自身も理解していた

自分も、雪を見ればあの嫌な思い出が脳裏を駆け巡るし、胸騒ぎだって起こる








「にしても、らしくねえよ」

「うっさいね、らしくなくて悪かったね」

「そういうのが言いたいんじゃないっつの」




はああ、とわざとらしいため息を吐いてしいなの隣に腰掛けると、ゼロスはううんと伸びをしてみせた






「俺さまたちがそんな簡単に死ぬわけねえだろ」

「当たり前だろ!」

「じゃあ、そんな気にすることないんじゃないの?」

「……そんな簡単に、割り切れるものじゃ ないんだよ………」






俯いて、拳をきゅっと握る彼女はやけに弱弱しかった






知っていた





本当は強がりな彼女が、本当はすごく怖がりで弱い人だってこと







虚勢を張っている彼女が、強がりな言動の裏に

小さな自分を押し隠して何でもないふりをしている事






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