TOD2

ぱたぱたと、はためいて
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「悪いわね、手伝ってもらっちゃって」




悪いと思うくらいなら、頼まなければ良いのに。





そんな事を考えるわけもない彼女は、洗濯物を取り込む手を止めずに僕を一瞥した。






「えっと、カイルの仲間の………」

「ジューダスだ」

「ああ、そうそうそれそれ」





それだけ言うと僕に背を向けてせっせと籠に乾いた洗濯物を放り投げていく。

この調子なら僕の手伝いなど不要のように思えるのだが。







「迷惑かけて悪いわね」






唐突に、彼女が口を開いた。

しょうがなく家事の手伝いを始めた僕は、籠にタオルを投げ込んで首をかしげた。






「何がだ」

「カイルよ、どうせあの子に巻き込まれちゃったんじゃないの?」

「……………」






言われて見れば、そうかもしれない







「いや、あいつについていく事は、僕の意思だ」




そう、スタンの 為にも

彼がいない世の中を、僕が代わりに守っていく為にも

その息子であるあいつが、引導を引かねばならない







英雄、だからだ








「そ、ならいいけど」






そう言って作業を再開する彼女の声は、18年の月日を感じさせた

ただ無我夢中にレンズを見ていた時とは違う

大人になった、とでも言うのか(いや、まだ言えないだろうか)

口調にも声質にもどこか丸みを帯びた気がする。

顔や手に刻まれた小さな皺や、どこか保護的な笑みを浮かべたりする所が







僕だけ取り残されたと感じさせた






彼女だけではない

ウッドロウも、フィリアもそうだ

目に見える皺や髭などの変化だけでなく、18年分彼らが生きてきた分

精神的にも大いに変わっていた







そして僕だけがまだ、あの時から時間が止まったままのようだ



それが、背負うべき罪であり罰なのであろうけれど







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