FATE長編小説

□FATE/grandstory
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 ー 始めに ー

 これからのお話しはFATEのオリキャラを織交ぜた物語となっております。
 セイバー、凜、桜とルートを分けて進めていき、始めはセイバールートからです。

 分岐点式に進行していきますのでプロローグは一つです。

 では、物語の世界へと…












 FATE/grandstory


 
 
 
晴れた冬の空は呑気な青色をしていて映える純白の雲を浮かべて。
日に照らされた花々も心なしか輝いている。
 

空から注がれる久々の天上からの恵み。
ここ数日分厚い雲が覆っていたせいもあって今日は温かく感じられる。
 
女が一人花に囲まれていた。

花達と会話するかのように話す女は溌剌としていて愛嬌がある。

「青虫さん御機嫌よう、そちらにはあなた好みの草は無くてよ」

全てが台無しになった。
綺麗な青空に輝く花達、そして美しい淑女。
彼女の台詞で薄気味悪いものに変わった。
 
青虫ごときに少女のように話し掛ける女。
露出の激しい一枚のワンピースを身に纏った女は思えば花畑には相応しくない存在だった。

「青虫風情があたしに近付けると思うなよ」
 
ぷちりと小さく。まるで悲鳴のように。
 
青虫は裸足で潰された。

呆気なく動くのを止め、立派な石段に青黒い染みが出来てしまった事に彼女はなんの落胆も見せない。
 
「まぁなんてことをするの、せっかく遊びに来て頂いたのに失礼じゃないの」
「あぁ失礼だな」

声が二つ重なる。おかしな事にそれらは同じ声。
一人二役。一度に二つの声を出せる者。
 
いやそんな芸当が出来る人間がいてたまるか。
花畑には二人目の女が現われた。ただそれだけの事。

「呼ぶなら蝶とか蜘蛛辺りにしといてくれないかねぇ。
礼儀の無い奴は嫌いだ」
「礼儀だなんて生まれたばかりの赤ん坊に分かるわけないでしょう」
「花の味占めるなら謡える位まで成長してから来るんだね
這ってる間は雑草でも食ってりゃあ良い」

これはまた変わった思考の持ち主が現われた。

「言葉が過ぎるわよ訂正なさい」

荒っぽく、淑女の欠片もない女はタイルの隙間から咲いている雑草を踏んだ。
口を歪めながら床に擦り付けると床にシミがまた一つ増えた。
叱責が飛ぶが彼女は楽しげに足をはねらせた。

彼女が宙を跳ねると床に広がっていた花々も揺れる。

種類など関係なく、デザインなど関係なく自然のままに成長した花々は壁を這い上がり床を犯し複雑に絡み合い狭い咲き乱れている。

真紅のモダンローズ
サーモンピンクのミニ薔薇
ブルームーンの苗木
紫雲
恋心
サマーレディー…

「相変わらず騒がしい中庭」

自然のままに咲く花が美しいというのに彼女達は芸術をまるでわかって無い。
自分達がどれだけその場にそぐわないのかわかっていない。

「なぁクロリス」

ダンスを、花を踏み躙りながらステップを踏む。

蕾は首を落とし蔦は抵抗し花弁は力尽き床に倒れる。
 
あれほどまでに美しかった世界が一変し彼女の舞台に成り下がってしまった。

「クロリス聞いてる?」

宙を舞えば花弁も散る。
自分を見つめる彼女に見せびらかすように彼女はステップを踏んだ。

「クロリス?」

床には花弁の絨毯が敷き詰められまだ生き残った花が踏みつぶされる恐怖と闘っている。
茨を潰し足が傷付いても彼女は舞った。

「あなたって気味が悪いわ」
 
嫌悪を隠さずクロリスは言った。
赤や黄色や紫や、色んな色が混じり合い不快な臭いが鼻腔をつく。
リズミカルなステップを踏んだ足は汚れて歩けば粘り気のある音が後に続いた。

「自分を踏んで何が楽しいの?」

咲き誇っていた薔薇達は踏みつぶされ
生き残った花達の悲しげな泣き声が聞こえて来そうだった。

「楽しいよ、やってみたら? 」
 
悲鳴さえも踏み躙って彼女は軽やかにステップを踏んだ。


ただそれだけ、清々しい空気を胸糞悪いものにした。
 
楽園の中で。
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