Main Dream


□名を呼んで
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空を望める最上階のテラスには、教団の高さ故かいつも風が吹いている。

その風で飛ばされないように被っていた帽子を酒瓶の下に置いて、クロスはふと後ろを向いた。

軽い足音がして黒髪の少女が顔を出す。リナリーとは違うアジア人系の顔立ちの少女だ。着ている白衣は彼女が科学班に所属する証。

手に持っている書類は恐らくクロスに持ってきたのであろう。ファイルにまとめて大切そうに抱えながらクロスの元へやってくる。

「クロス元帥。これ、お願いします。」

吹き付ける強風に目を細めて笑う少女から渋々ファイルを受け取って、クロスは不満げな口調で言う。

「別に俺のサインなんかいらんだろうに。」

「元帥全員の署名がないと通せないんだそうです。他の方々のサインはありますから、元帥で最後ですね。」

悪戯っぽくウインクする少女の額を軽く指で押してクロスは諦めのため息をついた。

他の人間の頼みなら断りもするが、この少女の頼みなら仕方がない。

好いている女性の言葉を無視するような男ではないのだ、自分は。と結論づけて酒瓶と帽子を持つと足をエレベーターに向ける。

「終わったら酒に付き合ってくれよ。」

「はい、分かりました。」

わしゃわしゃと少女の頭をかき回して笑ったクロスはとても楽しげだった。

<FIN>









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