Main Poem
□鉄格子の隙間から
1ページ/1ページ
聳える茨の塔
青い澄み切った空
見上げた僕は手を伸ばす
後数p
後数o
それで黄金の鍵に手が届く
それは地平線に等しく
月に等しく
絶望に等しかった
いつからここにいるだろう
滴る水音を聞きながら
いつからこうしているだろう
外を駆けていく鼠を見ながら
いつからここにいるだろう
鳥の嘲りを聞きながら
いつからこうしているだろう
差し出されたパンを見ながら
僕は考えることを止めない
知っているからだ
止めれば見えなくなることが
知っているからだ
止めれば届かなくなることが
知っているからだ
止めればあいつらの思うつぼだと
知っているからだ
止めれば何も残らないことを
例え世界が僕を忘れても
僕は忘れてはならないのだ
細く見える空に託すのだ
鳥に頭を下げるのだ
忘れてはならない
無くしてはならない
例え誰が覚えていなくても
僕だけは忘れてはならないのだ
茨の塔が赤く染まった
青い空が赤く染まった
僕は手を伸ばす
後数p
後数o
黄金の光の束を縞模様に受ける
それは命に等しく
温もりに等しく
希望に等しかった
気休めだと気付くまで後数秒
だがそれでも忘れてはならないのだ
だがそれでも失ってはいけないのだ
僕は覚えていなくてはいけないのだ
僕がここにいたことを
戻る際はこちらから。下は使用しないでください。