□ Short Story

□薄荷キャンディー
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姉貴がよく口にしていた『一目惚れ』なんて事信じていなかった…
だってそうだろう?出会って一目見ただけで好きになるなんて事ありえなだろ、そんな事理解なんて出来ない、そう思っていたんだあいつに会うまでは…

「や〜ぎゅう、や〜ぎゅう」

間延びした俺だけが発するあいつの名前

「仁王君…何度も言っていますが私の名前は柳生です、や〜ぎゅうではありません」

嫌そうな顔をしながら振り向く柳生を笑顔で迎える。皆に優しい紳士の彼が俺だけに向けるその特別な顔をみるために

「だから、や〜ぎゅうじゃろ?」

悪びれもなくそう繰り返す俺に彼は呆れたように

「ですから…あーもう貴方は小学生ですか!結構ですよ好きに呼んで下さい」

「お〜ほんじゃぁ今日からヒロちゃん呼ぼうかのぉ」

笑いながら言う俺に止めたまえなんて照れて怒りながらつかかってくる彼の俺だけに向けられる気持ちが嬉しくて、ついからかってしまう。

柳生に出会って姉貴が言っていた『一目惚れ』ってやつがどんなものか分かった気がした。

アイツといるだけで一緒にいられるだけで良かった筈なのに親しくなればなるほどそれだけじゃ友達なんかじゃ我慢できなくなって…

人間なんて欲望の塊なんだ
俺なんかは特に欲望に忠実な人間で我慢なんてそうそう出来なかった…

それでも一緒にいるためには我慢も必要で俺も柳生も男なのだから想いを告げる事なんか簡単に出来なかった…

何より柳生に拒絶されることが怖いのだ。
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