あひるの子

□あひるの子B
1ページ/16ページ

昨日すっかりカガミユウビのせいで、気分を害した俺はあのまま速攻で家に帰るとすぐにベットに潜り込んだ。
ほら、嫌なことがあったときは寝て忘れるのが、一番だろうっ!?
ところがどうした。ベットの中で思い出すのは唇に残る柔らかな感触と、微かに感じた快感のみ。
すっかり目が覚めてしまっていた俺は、それから朝まであ―だのうーだのうめきながら、過ごすハメになってしまった。

そして現在。結局一睡もできなかった俺は目の下にクマをつくりながら、朝も早くからふらふらと覚束ない足取りで登校中である。
いつもはもっと遅い時間に幼なじみのやちると、まったりのんびり登校するはずなのだが、さすがに昨日のことがあっては顔をあわせ辛い。
そうだ、ここは一つ心を落ち着かせて、昨日のことはきれいさっぱり清算させてから会おう。
俺は頬を叩いて自分に活をいれると深く深呼吸した。
よし、これなら日常的にやちると一緒にいても大丈夫だ!!
「ヨーチャン、朝から何してるの??」
突然、後ろから声をかけられたかと思えば、ふっと前から覗きこまれる。
目の前にはやちるのドアップ。
「ギャ――――――――――っ!!?」
俺は身も蓋もなく慌てふためいて、思わず近所迷惑になるんじゃないかって声で叫んだ。
ごめんなさい。大丈夫、なんて嘘です。
「な、なな、なんでやちるがいるんだっ!?」
あわあわしながら、とりあえず話しかけてみる動揺が収まりきらない俺。
やちるはそんな様子の俺を不思議そうに眺めながら、
「うん、ヨーチャンが珍しく朝早くに出てくるのが見えたから。」
と答えた。
盲点だった。お隣さんの弊害。
そして今明らかにかった真実。やちるはいつもこの時間にはもう支度が出来ているらしい。
動揺の収まりきらない俺が冷や汗を垂らしていると、今度はやちるが話かけていた。
「で、ヨーチャンこそどーしたの??こんな朝早くから??」
ギクリ。言い訳なんて考えてなかった俺は今度こそ本当に固まった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ