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□チョコ日和
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「で、京楽。一体何をどうしたらこういう状況になるんだ?」
確かついさっきまで、バレンタインがどうとかという話をしていた筈だ。
それが。何故。どうして。
「どうして、押し倒されなきゃいけないんだ!」
消毒液の臭いが染み付いたベッドに押し倒された浮竹は、自分を組敷く男を見上げて怒鳴る。
しかし、当の本人は怒鳴られているというのにへらへらと満面の笑顔。
「えー? だって、先生が可愛くヤキモチなんかやいてくれるからさぁ。
ボク的には、この際愛を確かめあうのもいいかなって」
「なっ!」
カッと一気に染まる白磁のような頬。その初々しい様に、京楽はさらに笑みを深める。
「ね、いいでしょ?
今日は恋人の日なんだからさ」
言うが早いか、京楽はさっさと浮竹のネクタイをほどき、シャツのボタンを外し始めた。
「ちょっ、こら! やめないか!」
「嫌。今がいい、今したいの」
子供のような言い種であるが、残念ながら目の前にいるのは子供などではなく、浮竹より屈強な男だ。ばたばたと暴れてみても、無駄な抵抗というやつである。
気が付けばネクタイは床に放られ、シャツは全開になっていた。
「しゅ、春水っ!」
腕を伸ばし、必死に抵抗をしていたら、胸元にひんやりとした感触。
「!?」
胸の突起に触れたのは、茶色くて甘い薫りの……チョコレートケーキのクリームだった。
「つっ、お前っ!!」
「エロ漫画のお約束だよねぇ」
指の温度で柔らかくなったチョコクリームを、京楽は浮竹の白い肌にたっぷりと塗り付ける。
こんな変態めいた事さっさとやめさせなければと浮竹は暴れるが、要領を心得ている京楽からはそう簡単に逃れられない。
「やめろっ、食い物を粗末にするような事をするなっ!!」
「大丈夫だよ、ちゃんと全部食べるからさ」
そう言いながら、京楽はチョコレートを塗った浮竹の胸の突起をなめる。
「つぅっ!」
普段されている事と変わらない筈なのに、浮竹は大袈裟に体を震わせた。
「ん、甘い…」
「やめろって言ってるだろ!」
頬を真っ赤に染め離せ離せと喚くも、今度は突起を吸われ、ヒッ! と痙攣する。
「やっ……あっ、やめっ!」
生暖かい口内に含まれ、突起に塗りたくられたチョコを丁寧に舌でなめとられると、背筋から腰にかけて、ぞわりぞわりと奇妙な心地になってくる。
次第に抵抗する気力も失われてきたのか、浮竹の口から拒絶の言葉は無くなり、押し殺した甘い呻きだけが聞こえるようになってきた。
「うっ……あっ、やだっ」
「そうだね、ここばっかり可愛がるのはよくないよねぇ」
そう呟くが早いか、京楽は勢いよく、浮竹の下肢を隠していた衣類を一気に引き抜いた。勿論、下着ごとだ。
これで浮竹の身を隠すものは、シャツ一枚と白衣のみ。
京楽は白く輝くように美しい浮竹の体を上から下まで見やると、大層清々しい顔で笑った。
「先生の肌、本当に白くて綺麗だから、チョコレートの茶色がよく映えるよ」
どうやらまだまだ、この遊戯は終わらないらしい。