春水くん×浮竹先生
□青空高く
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春の青空は高く、空気に芳しい花の薫りが混じっている。
満開の花で満たされた中庭はポカポカと暖かく、京楽はベンチでうとうとと微睡んでいた。
学校の中庭というよりは、何処か大きめの公園ではと思わせるくらい手入れの行き届いたそこで、京楽は授業をサボってベンチに寝転ぶ。
「ふあぁっ……眠」
横たわった木製のベンチは京楽の体をすべて乗せるには小さく、膝から下を無造作に投げ出した姿勢で、くわりと大きな欠伸をひとつ。
地元でも有数の進学校に入学したというのに、彼は勉学に打ち込む気など欠片も無い。
適当に出席して、適当に女の子と遊んで……とりあえず、退学にならない程度にサボってればいいだろう。
彼にとって学校に通う事など、親への義理を果たすための義務でしかないのだ。
「っていうか、こんな暖かくて気候の良い日に外に出ないなんて、それだけで罪だよ……」
日除け代わりに、大して読む内容もない薄い雑誌を顔に被せ、京楽はこの贅沢な午睡を楽しむ事にした。
が、残念な事に彼のそんな細やかな幸せは成就はしなかった。
「こら。新学期早々サボりか?」
頭上から降ってきた少し低めの声。
どこかで聞いた事のある声の主の記憶を辿ると、浮かんでくるのは純白。
雑誌を鼻先までずらすと、案の定白く長い髪。
京楽の顔を逆さまに覗き込んでいたのは、先日の入学式で出会ったあの白い男であった。
「ん? お前は……」
首を傾げる真っ白な教師に苦笑すると、京楽は顔を覆っていた雑誌をどかし、胸ポケットにしまっておいた眼鏡をかける。
「こんにちは〜、浮竹先生」
それが、京楽春水と浮竹十四郎の再会であった。