春水くん×浮竹先生

□青空高く
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「何で、ここに…?」
 わけがわからない。という疑問を顔いっぱいに浮かべる浮竹に京楽は内心、鈍いなぁ。なんて呟きながら、起き上がった。
「こんにちは。一年一組の京楽春水です」
「京楽…春水……?」
 ぽかんとした表情で京楽を見つめていた浮竹であったが、やっと目の前の自体を了解したのか、腰に両手を当てて、肩を怒らせてみせる。
「騙したのか」
「先に勘違いしたのはそっちでしょ」
 そう返すと浮竹は顎に手を当てて、記憶を掘り返す。
「……ああ。確かに、俺が先に『保護者ですか』って聞いたんだったな」
「優秀な記憶力で」
 笑いながら背もたれに寄りかかりると「京楽春水が女の子じゃなくてごめんね」と言い放った。

「いや。こちらこそ、勘違いしてすまなかった」
 生徒である自分にも素直に頭を下げる浮竹に、京楽は苦笑する。
 随分と生真面目な男のようだ。
「それで先生は何してるんです? 今、授業中でしょ?」
「それはこっちの台詞だ」
 殊勝に頭を下げていた姿から一変。浮竹は太い眉を吊り上げて、厳しい表情。
「お前、入学早々サボりか?」
「生徒のサボりより、教師のサボりの方が重いんじゃないの?」
 からかうようにそう言うと、浮竹は白衣をはためかせながら、京楽の額を指で突いた。
「俺は保健医だから、授業は関係無い」
「ああ、保健の先生だったんだ」
 男の先生なんて珍しいね。なんて、話を逸らすような事を言うが、浮竹には通用しない。
「お前、一年一組って言ってたよな?」
「うん、そう」
「じゃあ、担任は──」
「四楓院夜一先生」
 教師の名などろくに覚えない京楽であったが、やたらインパクトの強い担任の小難しい名前は記憶していた。
 勿論それは、美人教師だからというのも関係している。



「夜一のクラスか。だったら…」
 いきなり担任呼び出しか。と、少しだけ焦る京楽であったが、浮竹の次の台詞は違っていた。
「だったら、多少サボらせても問題無いだろ」
「……え?」
 今何か、教師として問題有る台詞を口にしなかっただろうか。
 予想していなかった言葉に硬直する京楽にまったく気付かないのか、浮竹は京楽の腕を掴んでベンチから立ち上がらせる。
「ほら行くぞ」
「行くって、どこに?」
 そう尋ねると、京楽の数歩先を歩んでいた浮竹が振り返って言った。
「俺の部屋……保健室だ」


 
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