たんぺんA

□ごめんねじゃたりない
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喜ぶ、怒る、悲しむ、楽しむといった感情を抱くことの出来る人間は、それと同時にその感情を表に出す。手段はいくらでもある。言葉、行為、表情、音、



『もしもこの世界に私と二人きりだったとしたら、臨也さんは私を愛してはくれますか』



彼女は俺にとって特別で、尚且つ大切な存在であった。しかしながらその思いとは裏腹に、少しだけ彼女に抱いていたのは、恐怖



「それはそうなら成らざるおえないんじゃないかな」

『それは私を人間として、愛するという意味ですよね』

「君の考えにはそれしかないよね。可能性の話をしてるのに答えは一つだと決め付けている」



彼女は自分自身の事が嫌いであった。自分の事はこれっぽっちも興味がなく、それでいて人間をもっともっとと知りたがる。俺みたいなやつと一緒にいる理由もそこにあるわけだ。職業柄たくさんの人間と交流がある。彼女にとってきっと俺は、人間を知る上で使える駒でしかないのだ



『…別の考え方があるというのですか』



だから俺は彼女の事がこわくもあった。自分が人間を愛しているように、彼女もまた人間を愛している。もしかしたら彼女は俺なんかより、ずっと。これほどまで人間が怖い、そして愛惜しいと感じたのは初めてだった。それにしても俺の中の、彼女を想う気持ちは一体どこから湧いたのだろうか



「そういうことだ。君が何故その質問をしたのか、そんな理由はどうでもいいし気にしない。だけど少しでも可能性について考えを巡らせたら、例えなんてありとあらゆるものがでてくるじゃないか。例を挙げるとしたら、俺が君に好意的に想いを寄せているとかね」

『でも臨也さんはそんなことしないですよよ』

「何故そんな事が言い切れる?」

『だって私は、こんな風にしか人を愛せない大馬鹿者なんですよ』



ごめんねじゃたりない



そういって、不意に俺の髪に手を伸ばした彼女の悲しげな表情ったらなかった。けれど、それでめ彼女が伸ばした手が今もなお、俺の髪を撫でていることに対して、多少期待してみてもいいのではないかと思った



「なら俺は、そんな君しか愛せない大馬鹿者さ」



髪を撫でている手を掴んで、そっと彼女を抱き寄せた



「ごめんね」





@補足
おちがみつからない。あの策士のいざやさんが奥手とか…どうですか?←



20101023


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