たんぺん

□かりそめの恋ならいらない
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   ホスト部 / 須王環





『おい、須王』

「何だい姫?」

『ウザったいからとりあえず私の視界から消えてくれ』



と、まあそれはそれは俺を邪魔者扱いする彼女



「消えてくれって姫、それは無茶なお願いだ。俺の後ろの席は君だぞ☆」



そういって彼女に向けてウインクを一つしてみるものの、軽々かわされてしまった。
彼女は俺のことが嫌いらしい。興味を持って話を聞いてくれたことも無いし。そんなことは俺自身が一番よく理解していることだが、なら一体俺は何をしたのだろう。彼女に嫌われてしまうような何かを、俺はしてしまったのだろうか。でもそれがわからなくて。だからといって彼女に直接聞くことも出来ない(明らかに失礼な行為だ)



『はいはいそうでしたねたしか』

「冷たいなあ。その参考書に向けている熱い視線を、俺に向けてくれないかな」



俺がしていることは自分が思う、女性を喜ばせるための手段の一つにしか過ぎない。それに女性が必ずしも応えてくれるわけじゃないのも知っているし、それならそれで自分の力不足だと反省したり、落ち込むこともある。だからこそ考えて考えて、策を練ったりもするわけ。しかしながら彼女にいたっては俺の努力は虚しく、全くと言っていいほど心肝がわからないのだ



『あっほらしー』

「し、失礼な」

『思ってもいないことを何で軽々言えるの?不思議でしかたないよ私は』



彼女に俺の言葉は届かない。確かに俺の言葉は相手にとってみたら、薄っぺらくも深くもとれるかもしれない。でもそこに必ず込めているのは愛だ。ホスト部ではお客様に喜んでいただくために。学校生活では、部では行き届かないところまで手が届くように



「ごめん、」

『やけに素直。雪でも降るんじゃないの』

「何でそんなに、俺のことが嫌いなの?」

『それ聞く?』



やっぱり馬鹿だね。そう付け足すように呟いた姫の視線は、それでもなお参考書に向けられていた。失礼だとわかっていたのに聞いてしまった。何をするでもなく、何を言うでもなく、ただ時間だけが過ぎていく。俺は一言も言葉を発する気になれず、ただじっと彼女のことを見つめていた。自分に向けられることのない彼女の真っすぐな瞳に、何時からか憧れに似たような感情が芽生えていたことには気付かずに



かりそめの恋ならいらない



須王のことは嫌いだし何かとうざいし、やっぱり嫌い。そうやって私のことなんか何も知らないくせに話し掛けてこないでよ、馬鹿。あなたに話し掛けられる度、目が合いそうになる度に、私は死んでしまいそうな位苦しいんだから!心臓なんかきっとそのうち爆発しちゃうんだから!

あー、須王のせいで
今日も幸せに生きてしまった。





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っていう不器用な恋の話。漫画を読んでいたら衝動に駆られて、あげようか迷ってたんですけど、来月桜蘭高校ホスト部最終巻発売らしいのでその前に内緒であげときます(^q^)



20110316


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