機動戦士ガンダムSEEDーZ

□第02話 『現実か幻か』
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エマが浴室から出ると、それまで自分が着ていたエゥーゴの制服の代わりに、別の服が用意されていた。恐らくラクスが気を利かせてくれたのだろう。そんな優しい彼女の心配りをありがたく思い、上着を手にとって拡げてみた。
 意外と落ち着いた印象の服だ。彼女のような可愛らしい外見の少女が着るにしては、やや地味な気がする。下はパンツを用意してくれているようだ。しかし、彼女にはどちらかと言えばワンピースのような、いかにも少女が好むような服しか持っていないイメージがある。

「…あの子だって、たまにはこういうのも着たいのかもね」

 ふっ、と笑って袖を通してみる。

「……?」

 即効で違和感を感じた。何が違うのかは何となく分かる。意外と胸の辺りが緩いのだ。続けて下も穿いてみるが、こちらも同様に腰周りに余裕がある。

「…着痩せするタイプなのかしら?」

 ラクスと出会って間もないが、思い出せる限りの彼女の姿を思い描いてみる。そして、そこから彼女のスタイルを想像した。しかし、イメージの中ではどう考えても寸法が合わない。彼女のスタイルは、良く言えばスレンダー、悪く言えば貧相である。

「将来に向けて…って訳でもないでしょうに」

 シャワーを浴びてスッキリしたと思ったが、また謎が増えた。…あまり重要ではないが。
 金持ちそうな彼女が今から将来を気にして準備をしているとは思えない。それに、金持ちはその時々で物を揃えるものだ。
 腑に落ちない表情でエマは首を傾げた。この屋敷には謎だらけだ。だが、その謎は浴室から出ると直ぐに解決された。

「服のサイズはどうかしら?」
「あなたは?」

 何てことは無い。この屋敷にはラクスの他にもう一人女性がいたのだ。これだけ大きな屋敷である。その他にも、もう何人か大人が居るかもしれない。当然といえば当然の結果だ。

 エマを待っていたのは一人の女性。やや茶色掛った、肩甲骨の辺りまで伸びた髪。身長は女性にしては高い方だとは思うが、長身と呼ぶにはもう一歩か。ほぼ自分と同じ位の高さだろう。
 艶やかな口元は、ラクスとは違った大人の雰囲気を感じさせる。優しそうな瞳を湛え、柔らかい視線を送ってくる。
 間違いない、この服は彼女のものだ。視線を体の方に移してみればよく分かる。ラクスと比べるのは失礼かもしれないが、ダンチだ。

「マリア=ベルネスです、エマ=シーンさん」
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