*Story*

□キミ依存症
1ページ/1ページ

「キミ依存症」



手を掴める程そばに居る程に、

キミはいつでも俺の隣に居てくれるのに、
こんなにも見ているものが違うなんて。



そう、コイツが考えてる事はいつも一つだけ。



ーオヤジに会う。ー


この野望でその頭の要領はいっぱいのようだ。


それに比べて俺はといえば、

これといって野望も夢も何にも無い…。


ただあの家から逃げたいいっしんこいつと一緒に着いてきて、こいつに至ってはただの成り行きでしかない…と思う。

それでも、ゴン。



お前がそばに居てくれるだけで、俺は救われてんだ。




ー操り人形事件が終わって


その日、ゴンとキルアは数日後に行われるオークション会場の 近場で寝蔵を探していた。


−「なー、どこも良いって。
どっかでなんか食って、後は寝るだけなんだしよー。」

ふぁ〜と大口全開で、気だるそうにするキルアは、近場で貰った宿案内とさっきからずっとにらめっこしたまま隣に腰かける少年に、声を掛けていた。


キルアがそういうのも、もうこうして外を歩いて1時間経っているからだ。



「どこも一杯だぁ…。」

うぅ、と唸りながら呟くは父親を探し旅をするキルアと同じく若冠12才の少年ゴンである。


そんな自分でも半ばあきらめ状態ながらも頑固に粘り続けるゴンに、あきれながら

―「だから、オークションに参加する奴らは数ヶ月も前から部屋取ってるんだよ。だからどこにも空きが無くて当然!しょーがねーだろ。」

あきらめろ、そういって立ち上がり、ゴンにの額をかるく小突く。

「うっ……ん〜俺は今日どうしても部屋がいいんだけど…。無理かぁ…」


いつもなら特に何もない平日でさえ、廃墟でも野宿でもい問わないはずなのだが、

今日は違ってやけに宿にこだわっている。


なのでキルアは、疑問に思ってはいた。


―「ゴン、お前今日具合でも悪いのか?」

だったら悪化させないため、屋内に居たいのもわからんでもない。そう思った。


「う〜ん…」


その問いにもゴンはこんな調子だ。




−「おい…ゴン」


「へ、」ぺた



キルアはゴンの額に自らの掌を這わせる。

それにゴンは少し驚いて目をまんまる見開いてキルアを見た。


―「ん〜…熱は無いよな…」


「…キルア?」



―「ん、いや…もしかして…

体調でも悪ぃんじゃねーか?って思って

さっきか聞いてんのに空返事しかしねーし、お前。

だから、こうしたんだよ。」



ゴンは無言だが、少しの動揺を見せると地図を持った手を一瞬浮き上がらせた。



べちっ



そしてそんなを立てたのは、ゴンの両手に挟まれた俺の頬だった。


―「てッ…なんだよ。」


実のところは痛みなどミジンコ程もないが、習慣のように反応だけを返す。



「キルア…


それはキルアの方じゃないの?」



―「へ?」


「俺、知ってるもんね。

昨日の晩、

…修行俺が起きるギリギリまでやってたんでしょう。

俺が寝てて知らないと思った?俺ちゃんと知ってるんだからね。」


そう、俺はちょっと集中しすぎて睡眠を忘れていた。

けど、昔から若干不眠症でもあった俺は、一日寝ないくらいどうって事はないのだが、


そういわれてみれば、今日はちょっと性質を身に着ける慣れない修行のせいか、


現在、まぶたがおもくなりつつある事にやっと気づいた。



それをゴンは言っているのだ。



―「…う…。無理なんかしてねーよ。」

「うそばっかり!とにかく今日はどんなぼろでもいいからベッドでゆっくり休もうよ!


ね?」


そういってやっと俺の顔から手を放した。





そして、くるりと俺に背を向けて、再びゆっくりとした足取りで歩き出す。




それに、俺もばつが悪い気持ちでついていく。



―「…ほんとに……俺は大丈夫なんだよ…」


ぼそりと小さい声で言ったのだけれど




「俺は…キルアがすっごいすっごいすっ〜ごい大事なの!




それに…



キルアが傍にいてくれるのすごい幸せなんだよ、俺。」



にこっ…と、まるで嘘のない真っ正直な言葉と、その表情を見ていたら、なんだか泣けてきた。(我慢するけど…)



自分の前を歩くゴンの手を後ろからつかむ。


「わっ!!なに?」


「ゴン……おれさ…」



「うん?」




「…おれ…」



思わず引き止めて、口から出かけた言葉は、まだ自覚のない自分の中に生まれたばかりの感情だった。



この気持ちをなんと言葉にだしていいのか…




「ほんと…こんな俺と友達になってくれて…




…サンキュな。」




一瞬悩んで出した言葉は信頼を込めて、親愛なる友達第一号に向けたお礼の一言だった。


本当の気持ちは未だ口にできない。



常に自分の中に壁があって、超える事は許されないからだ。





「…キルア。



おれ、ほんとにキルア大好きだよ。


俺の方こそありがとう!!!」



ゴンの手が曖昧に握っていたキルアの手をしっかりと握りかえす。


「お…、ん…うん。」

とっさに恥ずかしさというか、照れが沸き起こった顔をゴンの視線から外しながら、

掴まれて返された手をぶんぶん縦にふる。




「おい…わかったから、もう離せよ。」


「いやだ。キルアが照れるってすごい貴重なんだよね。」




「お前…面白がんな。野郎同士、手にぎって、反応見て何がおもしれーんだよ。」




「それは…俺が個人的に楽しいからだよ。」



「あ?」





「いつもS的なキルアが困った顔するのが…

なんかこう…くすぐられる的な?」

(にへっ)

とからかい気味に笑いながら言うゴンの姿を見て、
キルアは不服そうに手を挙げる。


「は〜いせんせ〜い、意味がわかりません。」


「う〜えーと。あ、ちょっと問題発言??だったかも…。


でも…これ…俺はうれしいんだけど。」


そういってつながっている手をそっと持ち上げながら、

駄目押しな雰囲気で意味ありげにじっとゴンの目が俺を見る。





「っ……じゃあ、罰ゲームってことでいいや」


「Σなっそれひどい〜!!」




そんなやりとりをする間にすっかり夜になり、月明かりで路面に二人の影ができているのをみて、

ほんとは、俺の方がうれしくなっていることこいつは気づいてるんだろう…。


でも悔しいから表情には出さない様に、


この変な気持にも蓋をして、気づかないふりをする。






いつまで一緒にいられるかわからない、



俺自身からこいつを守る為に…。








END
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ