12/08の日記

05:21
深夜の攻防
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深夜3時過ぎ。

仕事を終えマンションに帰ると、今ではもうすっかり見慣れた怪しい影が俺を待ち構えていました。


そうです。M子さんです。
通称『ストーキング・キノコ』のM子さんです。


数日前に泣かせて以来、姿を見かけなかったのですっかり安心しきっていたのですが…。


もう二度と現れなければ良かったのに…。
俺の知らない所で惨めに朽ち果ててくれれば良かったのに…。


でも再び奴は現れました。
あれほど俺の前に現れないようにとお願いしたのにそんな事はお構い無し。

しかも待っていたのはマンションのエントランスです。
最悪です。家に来るなよ、家に。



でももしかしたら今日は謝りに来たのかも知れません。
今まで迷惑掛けてごめん、と。

そして永遠のさよならを言いに来たのかも知れません。
もう二度と俺の前に現れない、と。



そんな俺の浅はかな期待とは裏腹にM子さんから放たれた第一声は次のようなものでした。



「謝ってください」




えぇぇぇぇーーーーっ!!


この生命体は何を言っているの!?
何で俺が謝るの!?


意味が分かりません。
こんなに意味が分からないのはおよそ5年振りです。


確か今まで迷惑を掛けられていたのは俺の方ですよね?
そして謝罪の言葉って迷惑を掛けた方が掛けられた方に対して言うものですよね?


だとするとおかしいですよね?
つじつまが合わないですよね?



M子さんの言い分はこうでした。


あの日の一言で自分はとても傷ついた。
 ↓
きっと竜太郎は謝りに来る筈。言い過ぎた、と。
 ↓
でも待っても待っても謝りに来る気配は全く無い。
 ↓
そうか、竜太郎は私の家を知らないんだ。
 ↓
仕方無いから私が竜太郎の家に行こう。



ね?頭がおかしいでしょ?


現代の科学の力でこの迷惑な思考回路を止める事は出来ないのでしょうか?



俺は単純に謝る気が無いだけなのです。
警察沙汰にして欲しくなかったらこれ以上俺に付き纏うのは止めて下さい。

そうM子さんに伝えました。

これが今の素直な俺の気持ちです。
これだけ素直に自分の気持ちをぶつける事が出来たのはおよそ5年振りです。



暫く黙り込むM子さん。


その沈黙を破り、出た言葉は次のようなものでした。


「うん、分かった…。でも今日はもう遅くて帰れないから一晩泊めて。」



無理に決まってるだろ!!


馬鹿も休み休み言ってください。
そんな事をしたら危険だろ、俺が。自殺行為ですよ。

大体夜遅くに来たんだから大丈夫でしょう。来れるんだから帰れるでしょう。
本当に無理ならタクシーでも呼んでください。


何分も説得して漸く諦めてくれました。
思った以上に粘り強かったので大変でした。



という訳で仕事帰りに一波乱ありましたが竜太郎は何とか生きています。
生きてるって素晴らしいですな。

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